第13章 オンナノコの初任務
宇髄さんは食べ終わるまでちゃんと介助してくれて薬を飲んだのを確認すると任務に行く前に一度屋敷に帰ると言って、帰って行った。
彼がいなくなるとポカポカ陽気の暖かさだった気がしたのにあっという間に真冬の気温に逆戻りしたように感じる。
(…いま、帰ったばかりなのにもう寂しいや…。)
いつからこんなに寂しがりやになったのだろうか。しっかりしなくては。
飲んだ解熱剤は作用が強いもので、横になっているといつの間にか眠りこけていた。
気がつくと夕方のようで夕陽の橙色が窓から差し込んでいる。
「あ、起きましたか?随分と寝ていましたね。気分はいかがですか?」
ボーッと寝ながら窓の外を見ているとしのぶさんが部屋に入ってきた。咄嗟に確認したその顔に怒りの色がないことにホッと一安心する。
「んーと、寝過ぎて頭がボーッとします。」
「失礼しますね。」と私の額に触れたしのぶさんが再び先ほどのように眉間に皺を寄せたことに戦々恐々と見てしまう。
(…お、怒ってる?また、怒ってる…?)
「おかしいですね…。解熱剤飲ませたと宇髄さんが帰る時に仰っていたので何度も熱の確認に来ていたんですけどほとんど下がらないんですよ。」
しのぶさんに怒られるのではないかとビクビクしていたのに、言われた言葉に固まってしまう。
熱が解熱剤で下がらないならば、それは間違いなくあの能力の反動によるものだということ。
解熱剤で下がるのであれば風邪やら他の病気を疑っていいが、今回はどうやら前者。
「…そうなんですか?」
「ほの花さん、何か既往歴はありますか?」
「い、いえ。ありません。」
「では、薬の耐性が付いている可能性はありますか?」
「…多分、無いと思います。お腹の痛みは無くなりましたし…。」
しのぶさんの言葉が誘導尋問のように感じて背中に汗が伝う。
これは熱の汗じゃ無い。
間違いなく冷や汗だ。
射抜くような視線のしのぶさんと目が合わせられない。
"お前はすぐに顔に出る"
宇髄さんの言葉が頭をよぎると、これ以上、しのぶさんに隠し通すのは無理だと感じた。
彼女は医学に精通している。
明日熱が下がる保証もないのに不確かなことも言えない。