第13章 オンナノコの初任務
ゴホンっという咳払いが聴こえたかと思い、扉を見るとしのぶさんが眉間に皺を寄せてこちらに笑顔を向けていた。
でも、その顔はちっとも笑っていない。
いや、むしろ……
(…お、怒ってらっしゃるーー!!)
はぁ…とため息を吐くと、名残惜しそうにこちらを見て離れていく宇髄さんに私も少しだけ残念だが扉にいるしのぶさんから怒りのにおいがぷんぷんする。
「ため息を吐きたいのはこちらなんですけど?宇髄さん。」
「何だよ、恋人との逢瀬でちょーっと抱きしめてただけだろ?此処でコトを致していたわけでもねぇんだし、そう怒んなよ。」
「ほの花さんはまだ熱発してると言ったはずですが…?」
それに関しては私も宇髄さんにおねだりしてしまったので、彼が怒られるのは不本意だ。
慌ててしのぶさんにそれを伝えようとするが、宇髄さんに目配せされて頭を撫でられてしまえば口を噤むしかない。
「悪かったって。もう何もしねぇから。」
私も悪いのに…、こんな時でも守ってくれる宇髄さんがカッコよくて胸がときめく。蜜璃ちゃんがこの場にいたらきっとキュンキュンしてくれていたと思う。
「全く…。アオイが入りにくくて、私を呼びに来たんですよ。場所をわきまえて下さいね。」
そう言うと、真っ赤な顔をしたアオイちゃんが下を向いたまましのぶさんの後ろに佇んでいた。
それを見て、絶対口づけも見られていたことに気づいて私も顔も真っ赤に染まる。
「へーへー。すいませんでした。」
「ああ、宇髄さんがいるならちょうど良かった。これ、ほの花さんに食べさせてあげて下さい。熱で頭がクラクラするみたいで、食事量が減ってるんです。どうせするならほの花さんが早く良くなるようなことして下さいね。」
そう言うと後ろにいたアオイちゃんが持っていた膳を受け取って宇髄さんに渡す。
忙しいはずなのに彼は何の迷いもなくそれを受け取ると二人を見送った。