第13章 オンナノコの初任務
長い睫毛が重そうに持ち上がると虚な目をしたほの花が天井を見つめている。
ぼーっとして一点を見たまま動かないほの花に声をかけてみた。
「…気がついたか?」
「は、い…。あ、あれ?」
「月のモノ、だって?いつも倒れるほど酷かったのか?ったく…よく鬼狩りになんて行けたな。」
俺がいることに驚いたのか、それともぶっ倒れたことで今の状況をちゃんと理解できていないのかは分からないが目をぱちくりとさせながら俺を見ている。
次第に状況を把握できたのかぽつりぽつりと言葉を紡ぎ出した。
「いつもは…そんなこと、ないんです、けど…実は此処にきてから数ヶ月ずっと止まってて…。久しぶりに来たから体がビックリしたのかもしれません…。お腹痛過ぎて死ぬかと思いました…」
その顔は心底嫌そうな顔をしていて、よほど痛かったのだろう。
先ほどまで月経痛くらいで…って思っていたが、女にしか分からないその痛みを軽んじていた。
(…死ぬほど痛ェってこの我慢強いほの花が言うんだからよっぽどだわな。)
「…そうか。じゃあそのせいかもしれねぇけど、お前熱も高いから暫くここで静養したほうがいいってさ。」
「そ、そうなんですか…。」
絶望感に打ちひしがれているほの花を見ると自分だけがそばにいたいと思っているわけではないと分かり目尻が下がる。お仕置きしようと思っていたことも既にどうでも良くなっていてそれよりもほの花に触れたくて仕方がない。
「本当はさ…。」
「え?」
「…本当は起きたら無理しやがってってこっぴどく叱ってやろうと思ってたのに顔見たら何も言えねぇわ。…よく頑張ったな。ほの花他の隊士から話は聞いた。さすが俺の女だ。」
頬に手を当てて褒めてやると布団で顔を隠そうとしていたが、表情から嬉しいという感情が溢れ出ていてそれが可愛くて自分の顔も緩んでしまった。
結局のところ、俺はほの花に甘い。
このまま抱きしめて寝たいところだったが、胡蝶から無理させるなと言われていたのでその日はほの花が寝るのを確認すると一人屋敷に帰った。
屋敷にほの花がいないということがこれほどまでに寂しいのかとその日からほの花不足で俺は枯渇しそうだった。