第13章 オンナノコの初任務
村田に礼を言って、今度こそほの花の病室に足早に向かう。
扉を開けると静寂がそこを包み込んでいて、窓際のベッドにほの花が横たわっていた。
一息吐くと、足音を立てないようにそこに向かう。スヤスヤと寝息を立てるその姿はいつものほの花のように見えるが、真っ青な顔をして息は荒い。
額に触れてみれば、熱を持っていることは明白で眉間に皺が寄る。朝まで抱きしめて寝ていたのに、その時と様変わりしている体調に心が騒つく。
(…あっちぃな…。)
ベッド脇にあった椅子に腰掛けるとほの花の顔を見つめる。
表情は苦しそうだが、生きていることに心底ホッとしている自分がいる。怪我はしていないと胡蝶が言っていたので鬼狩り自体はほの花的にはそこまで骨が折れるものではなかったのかもしれない。
彼女を困らせたのは己の体調不良以外なさそうだ。
汗で張り付いている前髪を避けてやると彼女の綺麗な顔が全面に見える。そのままベッドに投げ出されていた手を取ると握りしめた。
(…本当に綺麗な顔してんな…。)
熱で体中が火照っているようで握った手は熱い。
「…ほの花、早く目覚せよ…。」
情事後に意識を失っているわけではない今の状態は心配でたまらない。村田に手を貸してもらってここまで来たことも腹立たしくて、いま自分が握っているこの手が他の男に触れたかと思うとモヤモヤと心が疼く。
体調が悪いのに無茶して鬼狩りをしたこともちゃんと師匠として叱らないといけない。
話したいことは山程あるのにほの花が此処にいるのに、此処にいない。
「…お前、目が覚めたらお仕置きだぞ…?俺を心配させて、無茶して、他の野郎と手繋いだ報いを受けろよ?」
手を繋いだとは一言も言っていなかったが、体感的にはそういう気持ちなのだ。
それでも彼女を想っているからこそ怒りが込み上げるわけで…
「…ほの花、愛してる。早く喋りてぇな…。」
繋いだ手に口づけをすると、ピクンと動いた彼女の体に目を見開いて彼女を見た。