第13章 オンナノコの初任務
「…そうか。まぁ、倒れたのが此処で良かった。そんな痛ぇのによくここまで耐えたな、アイツ。」
「え、あ、は、はい…。そ、そうです…ね。」
急に目を若干逸らした村田の態度に俺が気付かないわけがない。
心臓の拍動も明らかに速くなっている。
(…コイツ、何か隠したな。)
俺はほの花のことならばなんでも知っていたい。たとえそれが苛つくことであっても。
目の前でビクビクしている男をジッと見つめてやるが、一向にこちらを見ないので先ほどよりも低い声色で話しかける。
「…何か隠したんなら早めに言っておいた方が身のためだぞ。俺はアイツのことなら容赦しねェ。」
「ヒぃッッ!ち、違うんです…!神楽さんがあまりにフラフラしていたので…!此処に帰ってくる前に少しだけ手を貸しました…!でも、ほんの少しです…!ふ、ふ、触れてしまって申し訳ありませんでした…!!」
「………よぉく分かった。テメェの名前覚えたぞ。」
ヒィィィッて俺はバケモンかよ。
確かにコイツからすればバケモンかと思うほど凄んだかもしれねぇけど、急に土下座をして床板に頭を擦り付ける村田を見ると弱い者いじめしている気分になってくる。
「本当なら…ほの花に触れた男は血祭りにあげてぇところだが、今回は致し方ねぇことだ。此処までほの花に手を貸してくれたことは感謝する。」
「…!!お、音柱様…!!」
「早くそれやめろ。俺が悪ぃみたいだろうが。もう行くぞ。俺はほの花の顔が見てェんだ。」
「は、はい…!お引き止めして申し訳ありませんでした…!!」
ほの花の初任務自体は成功と言えるだろう。
不運が重なって此処で倒れる羽目になったが、アイツは鬼殺隊としてきっちり任務を遂行した。
継子としても申し分のない戦果だし、師匠としても鼻が高いが…
どうも月のモノの痛みだけで倒れたというのが腑に落ちずにいる。ちょっとした違和感があったのにも関わらず、俺はこの時見逃してしまったことを後々、物凄く後悔することとなる。