第13章 オンナノコの初任務
村田の話によると、鬼の幻影を作り出す血鬼術を有した鬼との戦いで五十を超える鬼の幻影を五人の隊士で対応したと言う。
その中でも早期に本体がいると気付いたほの花が単騎で乗り込んで鬼の首を斬ったらしいのだが、引っかかることはある。
鬼の本体に気付いたからと言って単騎で行くとは初任務なのになかなかのぶっ飛び加減だ。
アイツのことだから確信がないとそんなことはしないだろうが…。
(…腹痛かったくせに無茶しやがって…。)
「あの、音柱様…?」
「アイツ…、起きたらただじゃおかねぇ…。」
「ヒッ、あ、あの!神楽さんがいなかったら全滅してたかもしれません…!なので感謝しかないんです…!怪我をした隊士の応急処置までしてくれて、神楽さんのおかげで無事に帰ってこれたんです!!なので、神楽さんを怒らないでやってください!」
必死に懇願してくる村田に今度はコイツに苛々してきた。俺のほの花のことを俺が一番よく分かってるつもりだし、ぽっと出のお前なんかに言われなくても怒るの意味が違うのだ。
俺が怒っているのはアイツの体を心配しているからだ。
鬼の首を斬るためにはその場で臨機応変に対応することは不可欠だし、ほの花の機転の利いた対応だったと思う。
単騎で行くことに怒っているのではなく、体調が悪いのに無理をしたことに怒っているのだ。
そんな俺の心の内を悟られないように村田の言葉に耳を傾ける。
(…俺、派手に大人な対応してるぜ…。)
「此処で倒れたって聞いて…。その、腹痛、のことは…教えてくれたので知っていたのですが…彼女一人に頼りすぎてしまったと反省しています…。申し訳ありませんでした…!」
腹痛のことを知っていた?
人に言うほど痛かったってことか。アイツのことだから悟られないように上手く取り繕いそうな気がするが、此処で倒れる前に人に言うほど月のモノが酷かったということは相当な痛みだろう。
それを理解すると怒りの沸点が徐々に下がっていくのを感じた。
(…月のモノなんていつ来るのか分からねぇだろうし、仕方ねぇか…。)
俺は深いため息を吐くと目の前の村田が再びビクッと肩を震わせた。