第13章 オンナノコの初任務
村田さんの話に戦々恐々としながら何とか町に辿り着いたが、私の腹痛は一向に治まる気配がない。
意識を保って帰ってこれたのは村田さんがずっと話しかけてくれたからだ。
前屈みで歩く情けない姿はそのままだし、雨もずっと降り続いている。
月経痛は温めると改善することが多いのに、この冷たい雨の中、ずっと小走りで帰ってきたのだ。冷え切った体は痛み止めをも跳ね除けて、月経痛の存在感を増幅させるばかり。
少しずつ明るくなってはきているが、雲がはびこる空のせいであたりは晴れの日よりもうす暗い。日の出は少し前に過ぎたはずなのに太陽の光が当たらないと寒くてたまらない。
「神楽さん、本当に大丈夫?顔が真っ青だよ…?」
「さ、さむいですよねぇ…、余計にお腹が…。」
「あの…どこかで厠寄る?」
ちっがーーーう!
そっちの腹痛じゃなぁーい!!
いや、確かに男性であれば一番最初に思い浮かぶのはそちらだろう。仕方ない。仕方ないとはいえめちゃくちゃ恥ずかしい。
「あの、そっちの腹痛じゃないので…。」
「そっちの…?…って、あっ…!!ご、ご、ご、ごめん!そういうことか…、えと、肩貸そうか?それか背負う?」
村田さんの勘が良くて助かった。
こんなところで恥ずか死ぬところだった。
しかしながら本当にフラつくほどの腹痛に最早限界だ。
先ほどの村田さんの話を聞いた後だと、宇髄さんに見られたら彼が被害に遭うのではないかと気が気ではなくて頼めなかったが、四の五の言っている暇はない。
「…あの、大変申し訳ないのですが、腕に掴まっても宜しいでしょうか…。宇髄さんに何か言われても私が必ずや庇いますので…!」
「わ、わかった!音柱様の件は頼んだ!ほら、掴まって?」
「…すみませんー。」
差し出された腕に掴まると倒れる心配がなくなってホッと一安心した。
宇髄さんのことを考えると不安は付き纏うが、今は一刻も早くしのぶさんに会いたい。
会ってこの痛みから解放されたい。
怪我をした隊士の付き添いで行くだけのはずが今や自分の体調不良を診てもらおうと考え始めていた。
月経痛は割と酷い方だが、ここまでの痛みは経験がない。
ぼんやりとした頭ではその理由も分からず村田さんの腕に放心状態で掴まって胡蝶邸に向かった。