第13章 オンナノコの初任務
「大丈夫ですか?!すみません、私が独断で行動したばかりに…!」
村田さんに連れてこられたところに一人の人が木陰で座っていた。どうやら足を鬼に斬られたようでもう一人の隊士が止血をしている。
「え?!いや、そんな…!神楽さんは悪くないです!自分の弱さが原因ですから!」
「代わります!私、薬師なので。」
止血をしてくれていた隊士に一言声をかけるとその場を代わってもらい、止血を始めた。
結構傷は深い。傷薬を塗る前に確かに止血しなければいけないが、これはどう見ても圧迫止血だけでは無理だ。本来ならば麻酔をして縫合しなければいけないほど。
命に別状はないと思うが、早くしないと失血死の恐れがある。
(…あー、こりゃ私ぶっ倒れるかもしれないなぁ…。宇髄さんに怒られる、絶対怒られる。)
自分がしようとしてることの行く末を考えるだけでも宇髄さんの般若のような怒り狂った顔が目に浮かぶ。
(…仕方なかったんです。止血しないとこの人死んじゃうかもしれなかったんです。)
心の中でいくら言い訳しても彼には届かない。
何も傷を全て塞ぐまでしなくていい。
ほんの少し止血できたらいい。
あとは持ってきた止血剤と傷薬を塗って、しのぶさんに診てもらおう。
そこまで考えが及ぶと圧迫止血をするフリをして、手を翳した。
(…ほんの少しだけ傷が塞がれば圧迫止血できる。ほんの少しよ。)
時間にして10秒ほど。
たったそれだけなのに体がズンッと重くなるのを受け止められなくて地面に手をついて、肩で息をする。
「え?!神楽さん?!神楽さんこそ大丈夫ですか?!」
「だ、大丈夫です…!あの、お、お腹が空きましたね!!」
「え…?あ、ああ。まぁ、もうすぐ夜明けだからね…。」
どんな言い訳だとも思ったが思考力すら低下していて上手な言い訳など思い浮かばなかった。
体勢を整えると回らない頭で何とか圧迫止血をすると止血剤を入れて傷薬を塗った。
包帯など嵩張るものを持ってきていなかったので自分の持っていた手拭いと胸元のモスリンを剥ぎ取り、巻き付けて手当てをするとその場に座り込んだ。