第13章 オンナノコの初任務
しかし、鬼の最後尾を目指そうにもあまりに夥しい鬼の量に目を見開くことになる。
(…ちょっとありえない量の鬼がいる。)
ここで自分が一人抜けたら村田さん達がツラいだけだ。回り込むよりもここで応戦した方がいいの?
屋根の上から見たその光景に冷や汗が全身を伝う。
こんなにいるはずがない。
どんどん増殖しているようにも見えるそれはまるで幻影のようにも見える。
(…幻影…?)
ふと浮かんだ言葉に私はあたりを見渡してみた。
違う…。複数の鬼とは言っていたけど、これは多すぎる。
こんな鬼がいたならば私たちのような下っ端がここに寄越される筈ない。
どこかに本体がいるんだ。
そうでなければこの鬼の量は考えつかない。
鬼の血気術で幻影を見せている。しかも攻撃ができる幻影。
私が斬った鬼は本物だった。
恐らく本物と幻影がいる。
そしてこれを操る本体。
一番大元の鬼がいるはずだ。
(…どこ?どこにいる…?!)
五芒星の首飾りを握りしめるとそこから赤い光が溢れてきて一箇所を差した。
(お父様が…、違う。歴代の陰陽師が教えてくれている。)
屋根の上を力の限り走った。
屋根から屋根に飛び移り、下から来る攻撃を避けながら五芒星の首飾りが差す方向に真っ直ぐに進む。
すると、大きな木の上に此方を見下ろす赤い目と目が合った。
「っ、いた…!ハァ、ハァ…。」
ヤバい、体が怠いし、お腹が痛い。
経血が流れ出る感覚に頭がふらつく。完全に貧血状態。
それでも、足に、脳に、心に、叱咤激励をした。
(…絶対に首を斬る…!宇髄さんの継子として戦果を上げる!!)
屋根を蹴り上げて舞扇を構えると鬼のいる木に向かって攻撃を仕掛けた。
しかし、動きを見ていた鬼が寸前で逃げて、町に降りていったので、慌てて後ろを追いかけた。
「…絶対、斬るっ…!!」
悲鳴をあげる体を無視して最高速度で足を進めると、鬼の前に躍り出た。
(…さぁ、ここからが本番よ。私は陰陽師の末裔なんだから…。)