第11章 ヨリミチトキミノミチ※
ほの花が俺が過去を話さなくても良いと思っていたと言ってくれたことに底知れぬ愛を感じた。
確かにさっきの不意打ちの一度以外、ほの花は俺に干渉してきたことはない。三人の元嫁たちとの関係を解消する前は私生活すら踏み込んできたことはないし、今だって必要以上に俺に関わりを持とうともしない。
素直で優しい奴に変わりはないのに、どこか一線を置かれているような気がするのは俺だけなのだろうか。
あれほど自分のことを話すのを躊躇してきたと言うのに、話してしまえばほの花が引いているその一線が壁のように感じる。
あんなに抱いたのに見えない壁に本当のほの花をこの腕に抱くことを阻まれているよう。
「…お前はさ、俺のこと知りたいって思ってくれてる?」
この壁が地味に怖いと感じてしまうのは何故だ。
普段派手にほの花を手の上で転がしている感覚はあるのに、本当のところはほの花を失う怖さが頭から離れない。
それはこの壁によるものだと思う。
できればこういうのは取っ払ってもらいたい。
「え?知りたいですよ?当たり前です!」
ウダウダと頭で悩んでいたというのにほの花はさも当たり前のように快活に返事をするものだから肩透かしを喰らいズッコケそうになった。
「は、はぁ?おま、ぜ、全然そんな素振り見せねぇじゃねぇかよ!」
思わずムッとして苦言を呈してみたがキョトンとした顔は変わらない。クソ可愛いが。
「だって…、知りたいけど知ると…色々ヤキモチ妬いちゃうのが嫌なんです。私よりあの三人の方が宇髄さんのこと知ってていいなぁ…って思うのが嫌だったんです。そんな感情、みっともないから…。それならいっそのこと知らないでいいって思ったんです。宇髄さんも話しにくそうだったし…。利害は一致してると思っていましたよ?」
「はぁ?!全然一致してねぇよ!少なくとも今はしてねぇ!俺を求めろ!嫉妬しまくれ!俺を死ぬほど愛せ!」
「え、え〜…?どうしたんですか、急に…。」
なんだ、その理由は。
クソ可愛い通り越して苛つく。どれだけ遠慮されてんだよ。
遠慮するのが当たり前だとも言うようなほの花の態度に俺の怒りは爆発した。