第11章 ヨリミチトキミノミチ※
「あー…泣きすぎて頭が痛いです…。」
「そらそーだろ。泣きすぎだわ、一時間くらい泣き続けてんぞ。いい加減泣き止め。」
宇髄さんの過去を知って、"洗い流す"という謎の言い分を言い放ち泣き続けたわけだが、あまりにずっと泣いているので途中で温泉から出てきて、今お茶を啜っている。
流石に泣きすぎたと言うのは分かっている。
だが止まらなかった。宇髄さんの背中を洗っていたら彼の悲しみや苦しみが自分の頭の中に勝手に入ってくるような感覚になったのだ。
ひょっとしたら意図せず、手を翳して彼を治そうと思ってこんなことになったのか…?
体の不調や怪我以外でも通用するのか、この能力は…?
もし、そうならばこの涙のワケも説明がつく…ってくらい泣いた。
浴衣を着て涼んでいる宇髄さんは少し着崩していてその姿がカッコ良い…のに私は死ぬほど不細工を晒していることだろう。
「……もう、出る水分ありません…。」
「茶を飲め。茶を。」
そう言われて持っていた湯呑みに口をつけるが、泣きすぎで頭が痛いのか、能力を使ってしまって頭が痛いのか全く分からない。
「でもよ…」と何かを言いかけた宇髄さんが私の頭を撫でてくれるので、顔を向ける。
「…ありがとな。お前がそんなに泣いてくれたからか知らねぇけど、不思議なくらいすげぇスッキリした。」
「…本当ですか?」
「ああ。流石は俺の女だな。」
そう言ってニカッと笑ってくれる宇髄さんはいつもの宇髄さん。
さっきみたいなしんどそうな雰囲気は感じない。
あんなつらい話をさせてしまったけど、スッキリしたと言ってくれたことで私も救われた。
「…いえ…、話させてしまってごめんなさい。本当に話してもらわなくてもいいと思っていたんです。知っているか知っていないかで"今"が変わるかと聞かれたら変わりませんから。」
それは間違いない事実で嘘はない。
そう思っていただけにそこの後悔は残るが、私の方が宇髄さんの言葉で元気付けられたとしか言いようがない。