第11章 ヨリミチトキミノミチ※
後ろで号泣するほの花の涙が背中を伝い、温かかった。
どれほど後悔して、苦しんだか。
あの時、あの三人に止められなかったら廃人にでもなっていたかもしれない。
だから、あの三人には感謝しかない。
そうでなければ、ほの花と出会い、愛を紡ぐこともできなかった。
そして、確かにほの花の言うとおり、クソみたいな親父だと思っていたがあの人がいなければ俺は生まれなかったのだと…
ハッとした。
そうなれば愛する女と出会うことすらなかった。
「…洗ったらもう一回温泉入るか。冷えちまったろ?風邪ひいちまう。」
「う、ふぇ…は、はい…」
「泣きすぎだろ。俺のことでそんな泣くな。」
「宇髄さん、はっ…大馬鹿野郎です…!宇髄さんのことだから…!大切だから…!大好きな人が苦しんだんだって考えたら同じように苦しくなります…!つらくなります。でも、それと同時にそんな想いしてまで話してくれたことが嬉しいんです…!苦しんだ分…私が宇髄さんを幸せにしますから!!だから…今は宇髄さんの代わりにたくさん泣きます…!あなたの心の蟠りを全部洗い流しますからねっ…!」
ボロボロと涙を溢れさせて泣き噦るほの花に"代わりに泣くって何だよ"と思ったのは最初だけ。
真剣に俺を想って泣いてくれてるのが分かると胸が熱くなった。男だからという理由で泣いたりすることはめっきり減っちまったけど、代わりに泣いてくれる女がいるってことは案外心強いのかもしれない。
俺と真逆で天真爛漫で家族に愛されて育ったほの花。だからほの花は愛を惜しまない。見返りを求めない無償の愛に溢れた女。
本来ならば一緒にいるべきではないのかもしれないと思ったこともある。
お館様が継子にして下さったのはコイツの無償の愛を俺に与えてくれるためだったのではないかとすら思う。
わんわんと泣いてるほの花を抱きしめると頭を撫でて温泉に浸かった。
肩には温泉なんだか涙なんだか分からない量の水滴が落ちてくるが、ほの花の言う通りまるで自分の過去を洗い流してくれるような…
そんな温かさと慈愛に満ち足りていて、心が愛で溢れてくるようだった。