第11章 ヨリミチトキミノミチ※
しまった、しまった…。
気にしないと思っていたのに、雛鶴さんたちと温泉に行ったことに嫉妬のような感情を抱いてしまって、聞こうと思っていなかったことを聞いてしまった。
これでは宇髄さんの愛を疑っているようではないか。恥ずかしい。
彼の広い背中をゴシゴシと洗って、考えを振り払うように頭を振った。
「なぁ、ほの花。今から独り言言うからよ。適当に流して聞いてくれ。」
「え?あ…は、はい。」
宇髄さんの声が聴こえたかと思うと突然そんなことを言うものだから押し黙って耳を傾ける。
「俺は忍の家系で、姉弟は9人いたが15になる前に7人死んだ。親父と二つ下の弟がいるが、里を抜けた時にほぼ絶縁してる。強い子どもだけを残すっつー意味わかんねぇ考えで覆面を付けて姉弟で殺し合いをさせられた。俺は…知らずに二人殺しちまってる。生き残った弟と親父は似てるんだが、俺はあんな人間になりたくないと思ってよ。嫁に決まってたあの三人を連れて里を出たんだ。」
あまりの凄惨な過去に絶句してしまった。
どれほどつらかっただろうか。
考え方の違うお父様と弟様を認められない気持ちも
抜けたことで裏切ってしまった気持ちも
実の姉弟を殺してしまったことへの罪悪感も
忍という家系に生まれたために受け入れなければいけないと葛藤したこともあっただろう。
宇髄さんの気持ちを考えると、こんな軽い涙間違っているのに勝手に涙が溢れてきた。
だって…そんなつらいことを私に話してくれた彼の勇気と優しさが嬉しかったんだ。
「…幻滅した?俺のこと。」
「する、わけがありません…!どれほどつらかったか…私なんかに想像すらできません…。でも、今…宇髄さんに出会えたのは…、ご両親の、おかげなので…そこに関して…私は死ぬほど感謝しています…。ひっぐ…。どんな、っ、過去があったとしても…宇髄さんが、いま、生きててくれて嬉しい、です、…。そして…つらいことを話してくれてありがとうございます…。」
思わず目の前の背中に抱きついて号泣してしまった。泣きたいのは彼の方だと心得ているけど涙が止まらなかった。
だから彼の悲しみの分まで私が泣こうと勝手に号泣した。
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