第11章 ヨリミチトキミノミチ※
「あー、そういやまだアレ見せてねぇな。ほの花、立つぞ。」
自分の悶々とした変な感情と向き合っていると突然思い立ったように宇髄さんが声をかけてきた。
「…あ、アレ?」
「おぅ。立てるか?」
「立てます!立てます!」
慌てて宇髄さんの膝から飛び降りると、立ち上がった彼に手を引かれて壁際に連れて行かれた。
(そこは押し入れなのでは…?)
目の前にあるのは押し入れだと思うのだが、彼がそこを開けると目に飛び込んできたのは…
「え…?お風呂…!」
「部屋に温泉付いてんの。いいだろ?だからこの宿にしたんだよ。お前と一緒に入りてぇからな。」
「い、一緒に?!?!」
確かに宇髄さんとは夜の営みはしているが、共に湯浴みをするだなんてしたことはないし、そもそも明るいところで彼に体を見られるなんてことが恥ずかしすぎる。
薄暗いところだから耐えれたことも明るいところであればそれこそ恥ずか死ぬ。
「…おーおー、また煩ぇな。心臓が。」
「ヒィッ!だ、だってぇ…。」
そうだった、彼は私の心臓の音が聴こえるんだ。
でも、だからといってそんなことを突然言われたら緊張するのは仕方ないことだ。
「…嫌なのか?」
「え、い、嫌とか…そういうわけではなくて…。」
明らかに残念そうな顔をする宇髄さんに居た堪れなくなって慌てて否定すると「じゃ、あとで入ろうぜ!」とにこやかに笑ってくるので完全にしてやられたと悔しくてたまらない。
「宇髄さんって私の扱い方よく分かってますね…?」
「まぁ、そりゃぁね。大事な女ですから。」
「…っ、ま、またすぐそんなこと言って…!」
「ばーか。冗談じゃねぇよ。本気でそう思ってっから。大事な女だから、お前のこと分かっていたいって思うだろ。当たり前じゃねぇか。」
そうやって私を見つめる宇髄さんの瞳は真剣で冗談ではないことは伝わってくる。
でも、それなら…
やっぱり
私もあなたのことが知りたいよ。
そう思ってしまうのはいけないことなのかな?