第11章 ヨリミチトキミノミチ※
宿屋の親父に聞いた温泉は帰り道の里からほど近いところに位置している。
それを聞いた時、帰りにほの花と寄ろうと決めていた。
まさかほの花が温泉を知らなかったことには驚きだが、それよりもほの花の初めてを一緒に体験できることの喜びもある。
初めての口づけ
初めての情交
初めての二人旅
初めての温泉
里での生活を窮屈だと感じていたようには思えないが、明らかに新しいことに喜びを見出しているほの花は物凄く可愛い。
里を出てから数時間でお目当ての温泉街が見えて来たが時は既に夕刻。
ほの花に野宿なんてさせられないので、親父から聞いていた宿屋に宿泊することにした。
「そう言えば…昨日のお宿も宿泊代を出して下さってありがとうございます…。お礼が遅くなってすみません…!」
「はぁ?そんなもん男が出すに決まってんだろ。しかもお前は俺の婚約者だろ?気にする必要ねぇよ。」
「こここ、こん、…やくしゃ…、あの、ありがとう、ございます…。」
ほの花が男に免疫がないのは知っているが、さすがに婚約者ならば夫となる男が出すのが当たり前だ。
そうでなくても俺はほの花に金なんて出させるつもりはない。
師匠と継子だとしても俺が出すのが当たり前だし、恋仲だとしてもそれは同じ。
だが、ほの花は金の面でまぁまぁきっちりしていて毎月の生活費の件では最初に少し揉めた。
お館様から預かった継子だったこともあったが、柱であれば十分すぎるほどの給金を貰えるため面倒を見るのは当たり前なのにいつも申し訳なさそうだ。
少しはあの三人の元嫁たちを見習ってほしいくらいだ。家族なのだから構わないのだが、未だに「あれが欲しい」「これが欲しい」だの言ってくるところは遠慮がなくて気持ちがいい。
ほの花だってそれくらいしてもいいものを…とそこだけは少しだけ不満があるのだ。