第11章 ヨリミチトキミノミチ※
「何処に行くんですか?」
不思議そうに俺を見上げるほの花に到着するまで内緒にしておこうかと思ったが、あまりにその瞳が輝いていてついつい話してしまった。
「んー?温泉。」
「おんせんって何ですか?」
「………はぁ?!」
「え?え、あの、おんせん……?」
ちょっと待て、温泉しらねぇとかある?
コイツ、本当に里の中からほとんど出たことない"里入り娘"か?!
いや、確か三ヶ月ほど正宗たちと全国津々浦々旅をしていたと言っていた気がするが…。
その時に温泉……ああ、ほとんど野宿だったと言っていたから寄ったことなんてないのか?
信じられないと言う目で見ていると少し不満げに口を尖らせるほの花。
その顔も可愛いのだが、早々に機嫌を直してやらないと目的を断られる可能性がある。
「あー、ごめんごめん。温泉っつーのは簡単に言えばいろんな効能があるデッカい風呂だな。」
「いろんな効能がある?お薬のお風呂なんですか?!初めて聞きました!すごい!どんな配合なのでしょう?!」
「配合…って。あのな、温泉は自然に湧くものなんだ。その泉質によって効能が違うからいろんなところの温泉を入って回るのが俺は好きなのよ。」
「へぇー…。なるほど。自然の力なんですね…。お湯の成分調べてみよう…!」
おいおい、温泉に来て成分調べたいなんて思う女初めて見たぞ。
だが、効能があるということが薬師として惹かれるのか途端に楽しそうな顔をしたので良かったと思う。
里にいた時は良くも悪くもほぼずっと泣いてたからな。最後らへんは嬉し涙だとは思うが、久しぶりに笑顔を見れたような気がした。
やっぱりほの花は笑ってる方がいい。
「温泉があるってよく知ってましたね?」
「昨日泊まった宿屋の親父が言ってたんだよ。それ聞いちゃァ温泉好きの俺が行かないわけにはいかないだろ?」
「そうだったんですね…!」
ほの花は俺に抱かれて意識飛ばして眠りこけてたから知らなかっただろうな。
俺が親父とその話をして、部屋に戻った後に起きたんだから。