第10章 『実家に帰らせて頂きます』【其の弍】
「これ、持っていくか?」
「あ、でも…荷物増えてしまうし…、今回は薬草とかを持って帰りたいので…。」
「そうか、それなら此処に入れておいてやるからまた取りに来ようぜ。」
また…一緒に来てくれるつもりなんだ。
そんな宇髄さんの気持ちが嬉しい。
本当は彼と結婚するなんて夢のまた夢だと思っていた。鬼殺隊になってしまった以上、死と隣り合わせなのは変わりないし、それは彼も同じ。いや、私よりももっと危ない任務をしているはずだから。
そんな未来ですら考えてしまうことが憚られる立場で私は彼に結婚したいという欲を押し付けたらいけないと思った。彼の任務を考えるとちゃんとした夫婦という関係は重荷になりそうだからだ。
だからあの三人ともちゃんとした夫婦の関係を築いてなかったのではないか。
それなのに"俺が花嫁にしてやる"だなんて言葉を聞けるとは思わなくてそれだけで体が震えそうなほど嬉しくて、涙も溢れそうだった。
彼のお嫁さんになることがどれほど幸せか。
どれほど望んでしまうか。
もし、鬼を殲滅できたら…
鬼舞辻無惨を倒せたら…
そんな未来を想像してもいいのだろうか。
その時、お互い生きていたら彼とそうなりたい。
花嫁衣装の箱を棚にしまってくれている後ろ姿を見ながら遠い未来を想像する。
こうやって高いところのものを私の代わりに入れてくれて、穏やかな愛に溢れた生活。
その内、子どももできて家族が増えるのも良いな。
宇髄さんと一緒ならそんな笑顔に溢れた生活を簡単に想像ができるのだ。
「宇髄さん。ありがとうございます。」
「ん。さて、薬品庫にいくんだろ?」
「はい!地下なんです。行きましょう。」
それは夢のまた夢かもしれない。
でも、想像すると暖かい気分になる。
愛してくれる彼の隣にいる未来を思い描き、私は彼の手をとり、薬品庫に向かった。