第10章 『実家に帰らせて頂きます』【其の弍】
「すげぇ、似合ってる。」
「あ、ありがとう、ございますぅっ…!」
ほの花の父親が娘に残した花嫁衣装は西洋のものなのだろう。あまりこの辺じゃ見かけないが美しい顔立ちのほの花なら着こなせるだろうと思い、あてがってみると本当によく似合っていた。
それはほの花との未来を簡単に想像させて胸を熱くする。いつかほの花にこれをちゃんとした形で着せてやりたいと本気で思った。
「…いつかこれ着て見せてやろうぜ。俺が花嫁にしてやるから。」
「んえっ?!い、いや、そんな…!気を遣わせてしまってごめんなさい…!」
コイツは何故一番最初に自分と結婚することが気を遣わせていると思うのか。
普通に考えたらほの花みたいに美しくて器量のいい女と結婚できることの方が男としては有難いに決まっているのに。
此処にいてなかなか貰い手が決まらなかった弊害だろうが、ほの花は自分の魅力をイマイチ理解していないのが物凄く足枷だ。
「こーら。気なんか遣うわけねぇだろ。俺とは嫌だっつーのかよ。」
「そんなわけありません!!宇髄さんは素敵だし、…大好きですし、嬉しいけど…。」
「…けど、なんだよ?」
「わ、私、なんかでいいのかな…って。」
俺は顔を引き攣らせた。
恋仲となっておきながらその先を想像したら自分なんかでいいのか?と感じるほの花の気がしれねぇ。
お前じゃないと意味がないのに。
そうじゃなければ三人の嫁達と関係を解消する必要などなかった。ほの花と出会わなければきっとそのまま関係を続けていたし、本当の夫婦となっていたことだろう。
それを解消してまでほの花と恋仲になった俺の覚悟をコイツはちゃんと理解してねぇ。
「…俺の女を"なんか"つーな。阿呆ほの花。お前じゃねぇと意味がねぇんだって。」
「…あ、ありがとう、ございます。」
それでも不安そうな顔をするほの花に俺は一つの決意をした。
だったらちゃんと誓ってやる。お前が不安にならないように。