第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
ドクンドクン──
この心臓の音は私だ。
しかも、絶対に天元に聴こえている。
まぁ、おそらくお風呂に一緒に入るのが恥ずかしいと思っているのだろう。
実際、それも恥ずかしいと言えば恥ずかしいのだが…
今日の私がドキドキしているのはそう言うことではない。
いつものように着物を脱がせてくれると素肌同士が触れ合う中、再び抱き上げられる。
左腕が斬られたことで機能訓練段階の天元だけど、ちゃんと私を落とさないように配慮してくれているのも伝わってくる。
何より彼の温もりが暖かくて、こう言う時とても嬉しくなる。腕を治したことを天元は気に病んでいることを知っているんだろうなと分かっているけど、やはり私はこの手の温もりが大好き。
何度同じ場面に出会したとしても何度でも天元の腕を治すと思う。
それくらい私にとってかけがえのない温もりだから。
「ねぇねぇ、今日は私が背中流すね。」
「んー?おー、大丈夫か?フラついたりしねぇか?」
「うん!お昼寝したら本当に良くなった!ありがとうね。」
それに嘘はない。
心配そうにこちらを見る天元に私は笑顔を返す。
ゆっくりと椅子に下ろしてくれると湯気を立てている湯船からお湯をかけてくれた。
こうやっていつも私の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれていた天元。
でも、私は彼の体を見る度に厭らしい気分になっていた。早く抱かれたいだなんて。せっかく看病してくれていたのにそんな邪心を抱いているだなんて恥ずかしくて言えなかった。
でも、ちゃんと知りたい。
私のことをまだ求めてくれるかどうか。
ただ腕を治した御礼に看病してくれているのか。それともまだわたしに女を感じてくれているのか。
ちゃんと知りたい。
大きな手が髪を洗ってくれると、体に触れる。
背中に這う手が前に来ようとした時、わたしはその手を掴んだ。
「…ん?どうした?どこか痛かったのか?」
「……ううん。」
どこも痛くない。
痛いのは、
苦しいのは、
心だよ。
もう求められないんじゃないかって怖くてたまらないんだよ。
天元、ねぇ…まだ私を求めてくれる?