第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
一応、仲直りのようなものをした…と言ってもいいのだろうか?
ほの花はいつも通りで、心臓の音も変わらない。
また我慢させていないのならばこれ以上言うことはないのだが、ほの花に関してだけ俺は必要以上に干渉してしまうところがある。
愛ゆえだと言うことではあるが、やはりそれによってほの花に嫌われるのは不本意だから避けたいところだ。
すると、薬草を押し潰していた手を止めると、徐にほの花が話し出した。
「私だって…天元が思ってるより、ずっとずっと天元のこと好きだからね。」
「…へ?」
「お風呂入ろう?今日は私が背中流すよ!」
「あ、ああ…。」
さらっと言ったその言葉だけど、俺のことを愛してくれているということが伝わってくる優しい視線に満たされていく。
ああ…
何でこうもコイツは簡単に俺を堕としてくれるのだ。
ずぶずぶと沼のように入り込んだら最後。
俺はほの花から離れられない。
離れるつもりなどないが、毎秒ごとに俺はほの花に翻弄されて愛おしいと感じている。
準備してくれていた夜着やらを手に持つと俺の元に駆けてくるほの花。
いつもは恥ずかしいと言って風呂に入る前には必ず渋ると言うのに今日は積極的だ。
よほど風呂に入りたかったのだろうか。
久しぶりに外に出ていたこともあって、風呂に入りたくなる理由もわからなくはない。
俺は俺で柱稽古の後は早く風呂に入って汗を流したいのは同じなので利害は一致している。
ほの花の体を引き寄せるといつものように抱き上げる。
本当はこんな風に抱き上げられたりするのが恥ずかしいとほの花が思っているのは知っている。
だが、俺はこの腕の中にほの花の重さを感じると物凄く安心するのだ。
"生きている"と実感することができる。
思い出すのは心臓が止まった時のほの花の姿。もう二度とあんな姿は見たくない。
もちろんいつかは死が二人を別つだろう。
だが、まだその時じゃない。
これから俺はほの花と気の済むまで添い遂げると決めているのだから。