第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
「はぁ…。」
一体何度ため息を吐いただろうか。
柱稽古が終わったので、いつもなら部屋にいるほの花を連れて湯浴みをするところ。
だが、先ほど嫉妬と独占欲に駆られて俺はほの花を怒らせてしまった。
どうやら聞き耳を立ててみればほの花の寝息は聴こえてこないから寝てはいないだろう。
と言うことは起きてる。
と言うことは顔を合わせる。
と言うことはさっき気まずいまま仲直りもしていないわけで俺は若干の恐怖を感じている。
今までは喧嘩しても俺が忙しくて鬼狩りに行ってしまうことで数日経って帰ってきた時はお互い熱も冷めているのですぐに仲直りできた。
だが、今は違う。
要するに"さっきの今"だ。
まだほの花は怒っていることだろう。
「…どうすっかなぁ…。」
迷っているのは理由もある。
何故ならばいま俺とほの花は同じ部屋で生活している。
ほの花がいる部屋に身の回りの物が仕舞われていて、湯浴みをするためにはそれを取りに行かねばならないのだ。
「…まだ、怒ってるよな…。」
こんな直近で気まずい空気に直面することなど今までなかった俺は正直どうしたら良いか分からずにいる。
それ故、先ほどから部屋の前をウロウロウロウロ…
元音柱ともあろう俺が随分と地味な行動をしている。ド派手に入って行って『ほの花!風呂だ!』と言いたいところだが、今回は俺が悪い。
嫉妬と独占欲を押し付けたせいで無駄にほの花を束縛してしまったのだから。
しかしながら、ずっと此処にいるわけにはいかない。
「…うっし…!行く、か…!」
決心がついた俺はやっと襖に手をかけると勢いよく開けてみた。
すると、ほの花は薬を作っていたようだった。
それなのに、俺の姿を確認するや否や、その手を止めてニコッといつものように笑ってくれたことで肩透かしを喰らうことになる。
「あ!天元、お疲れ様!疲れたでしょ?お風呂入る?準備してあるよ!」
「あー、…お、おう。ありがと…。」
「私も一緒にいいの?」
「は?!え、い、良いのか?」
「うん!お風呂で倒れてると困るもんね…!お願いします…。」
恥ずかしそうに頬を掻きながら苦笑いをするほの花だが、その普通の態度に俺の頭の中は後悔でいっぱいだった。