第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
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「ほの花ちゃーん?」
「……?」
伸びのある高めの声が部屋の中でしたことで私の意識は浮上した。
どうやら不貞寝したは良いものをちゃっかり寝てしまったようで覗き込んで来た須磨ちゃんの顔に驚いて飛び起きた。
枕元にはすっかり冷めてしまったおにぎりが置いてあって、外からは天元の声が聴こえてくる。
(…もう、午後の稽古始まったんだ…)
昼寝をするつもりなんてなかったのに、うっかり寝てしまったのは病み上がりだからという理由もあるだろう。
久しぶりにこんなに起きているのだ。
天元が部屋の中にいろと言うのは間違いない気がして来た。
彼の言葉を曲解したのならばあの悪態は頂けない。時すでに遅しだが、天元にはあとで謝らなければならないだろう。
「大丈夫〜?」
ボーッと一点を見つめてしまっていたため、ひらひらと手を動かして私の意識を確認してくれる須磨ちゃんに慌てて視線を絡ませた。
「あ…う、うん!大丈夫!お腹空いたからおにぎり頂くね!」
「冷めちゃったねぇ…、作り直す〜?」
「いや!いいの!これを!いただきます!!」
まさか天元と喧嘩をしたせいで食べ損ねなんて恥ずかしくてたまらない。
そんな私を不思議そうに見つめると須磨ちゃんは持っていたお皿を差し出した。
「ねぇ、おはぎも食べない?!ほの花ちゃんと食べようと思って持って来たの!」
「わぁ!美味しそう…!食べる食べる〜!」
「そうそう!その調子!嫌なことがあったら甘い物に限るよぉ〜!!」
「そうだね!!……って、え?」
須磨ちゃんの言葉に私は固まる。
だって…私は彼女に嫌なことがあったなんて一言も言っていない。
まさか顔に出ていたのだろうか?
流石に驚いて瞬きを繰り返すことしかできない私に須磨ちゃんはニコニコとしたままおはぎを頬張った。
「…え、な、何で…?嫌なことあったって…天元がなんか言ってた…?」
「えぇ〜?ちょっほまっちぇね…!」
食べたばかりのおはぎを咀嚼してごくりと嚥下した須磨ちゃんに申し訳なさが募るけど、内容が気になって身を乗り出してしまった。