第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
「私って思い通りにならなければ…邪魔な存在なの?」
「…は?」
口の中にはおにぎり。
それ以外発せられない状況だったが、ほの花の言葉だけ妙に鮮明に耳に入って来た。
遠くではやっとありつけた昼飯に歓喜に沸く隊士の声が聴こえてくると言うのに。
この空間だけ異質だ。
ピリピリとした空気感がほの花の心模様を表している。
(…しまった、怒らせたか?)
そう思うのもおかしくはない。
少し間を空けて発した言葉を考えてみればあまりにほの花に自分の希望を押し付け過ぎたのではないか?
「まぁ、待て…ほの花。」
「もう寝る。それなら満足なんでしょ?天元は。おやすみなさい。」
「ちょ、…おい!ほの花!メシは…」
「あとで食べるから置いといて。」
そうピシャリと言うとほの花は部屋に入って行ってしまった。
その後ろ姿が『追いかけてくるなよ』という拒否反応に見えてそれ以上声をかけることすら憚られる。
「…あー…ちと…やり過ぎたか。」
冷静になってみればほの花が怒るのも無理はない。
可愛くて可愛くて仕方がないほの花を他の男に見られることが嫌だと言うのは俺のただの嫉妬と独占欲に過ぎない。
これほどまでに誰かに執着したことがないため、歯止めが効かないもまた悪化させる一因だ。
取り残されたほの花用の少し小さめのおにぎりが俺を恨めしそうに見てくるが、渡すはずだった主は部屋で拗ねてるだろう。
もちろんほの花を愛してるからこうやって独占欲を押し付けてしまうのだが、どうにも此処最近欲求不満も重なっていたのも悪い。
隣にほの花がいて、既に心を通わせているのに抱けない状況が続いていて俺も苛々していたのかもしれない。
今日あたり抜いておくしか無いか。
こんな状況ではほの花に抜いてもらうことなんて出来やしないし、抱くことなんてもっと出来やしない。
どうせ俺は歯止めが効かずに朝まで抱き続けちまうに決まっている。
そうなりゃまたほの花は熱でも出して、床に伏せることになるだろう。
そんなことは、望んでいない。