第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
「やっぱお前部屋にいろ。」
昼休憩に戻って来た天元が手のひら返しをして来たことに私は固まった。
手には二人分のおにぎりとお茶が乗ったお盆を携えているのだが…
「え?何で?邪魔だった?」
「いや…邪魔っつーか…よ。気が散るっつーか…何つーか…?」
「何もしてないのに…?此処で見てただけなのに?」
どうも天元はモゴモゴと言いにくそうにしているが、その言葉に納得はできない。
だって私は此処に座って見ていただけで、鬼殺隊士のみんなに声をかけたわけでもなければ、声をかけられたわけでもない。
要するに本当に見ていただけなのだ。
それなのに気が散るとは随分ないい草だし、此処で見ていていいと言ったのは天元ではないか。
「えー…、じゃあ、散歩でも行って「それも駄目に決まってんだろ。」……。」
此処にいるのが駄目ならば散歩くらい許して欲しいと言うのに天元は頑なに許してくれない。
こちらは早く体力をつけて、少しでも元に戻りたいと言うのに天元の庇護によって身動きすら取れない。
もちろんありがたいことだけど、二週間部屋の中で何もできなかった私はこうやって陽にあたるだけでも嬉しい。
部屋の中にいたら気分まで滅入りそうなのだ。
「でも…」
「いいから食ったら部屋で寝てろ。あまり急激に無理すると体に障る。」
「えぇ…?でも、陽の光に当たるのは体の機能を回復させる助けに…」
「寝 て ろ。俺の言う事が聞けねぇなら明日からまた部屋から出さねぇぞ。」
いくら何でもそれは横暴ではないだろうか?
私は縁側で日向ぼっこをする自由もないの?
もちろん勝手なことをしたせいで、彼に迷惑をかけているのは分かっている。
看病してもらっておきながら、彼の意見を無碍にするつもりはない。
だけど、私ばっかり天元に抱かれたい、天元と早く元の生活に戻りたい…と思っているのではないか?という気すら起こってしまうその物言いにイラッとしてしまった。
私は仮にも医療者。
体の機能のことは私のが知り得ているのに、何の理由かもわからないのにとにかく部屋にいろと言う天元。
これではまるで軟禁ではないか。
おにぎりに食らいつくと有無を言わさないという態度の天元に私は拳を握りしめた。