第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
だが、大切にしたいとと言ったものの、弊害もある。
いや、分かっていたことだが、目の当たりにすると腹も立つのは仕方ないことだと思う。
「おい、テメェ…どこ見てやがる…?」
「へ…え…?!あ、い、いえ!あ、あの…!ね、ね、猫がいた、、ような…?!」
「そうか…。奇遇だな。俺もそっちには猫がいると思っていた。可愛い可愛い俺の継子で俺だけの可愛い子猫ちゃんがよぉ…、なぁ?」
「す、す、すいません…!つ、つい出来心で…!!綺麗だなぁ…って…!ももももも申し訳ありません!!!」
そいつの視線の先にいたのは此方を呑気に見てニコニコしているほの花の姿。
間違いなく俺とほの花は目が合ってるし、俺を見ていたのは間違いないのだが、コイツがほの花を見ていたのもまた事実だ。
猫の僅かな鳴き声であっても足音であっても気づく俺が猫がいたかどうかなんて一目瞭然のこと。
「さっきの鍛錬をお前だけ二倍やってから飯だ。いいな。」
「ヒィィッ!!お、お許しを…!」
「うるせぇ!!早くやれ!!本当に殺られてェなら話は別だがよ…?」
「や、や、やって来ます!!すみませんでしたァアアア!!!」
俺の絶対零度の視線に耐えきれなくなったその隊士が震えながら鍛錬に戻って行ったのを見送るとほの花を見つめる。
キョトンと首を傾げているが、その顔は穏やかなまま。
今までは鬼殺隊士として第一線で戦っていたのだから少なからずほの花とていつもそれだけ気を張っていた。
穏やかな空気感も今よりも無かっただろう。
だが、今はどうだ?
ほの花からは殺気や闘気は感じない。
俺の嫁になるのにそんなものは必要ないのだから構わないのだが、元々美しい容姿をしているほの花から其れを取り除いてしまえばただの美女だ。
そんな奴があそこで座っていればそれだけで目を惹く。
惹きつけられるのも致し方ないのだが、今日は俺があそこで見ていても良いと言った。
誰も責めることもできない事案にため息を吐くしかない。
(…これだから無自覚美人は手を焼くんだよなぁ…)
尚も此方を見て楽しそうに笑っているほの花を見て俺は人知れずため息を吐いた。