第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
(…早く、健康になりたい…)
今の現状は過去の自分の行いの責任を取っているだけだ。
悪いのは過去の自分であって誰でもない。
だからそんな風に思うのは間違っているのに彼に抱かれたいという不埒な希望のせいでどうしようもない期待を抱かせる。
「大丈夫か?ほの花。つらくなったら俺に寄りかかっていいからな?」
「うん。今のところ大丈夫。」
私よりも天元の方が私の体を理解してくれているような気もする。
記憶のない時の私もそんな天元に全幅の信頼を寄せていたし、もちろん今の私だってそれは変わらない。
今の発言だって、度々眩暈で食事が摂れずに彼に寄りかかっていた過去があるからだ。
自分の判断での"大丈夫"は彼の判断のそれよりも信頼が持てない気がするほど天元は私の体を理解している気がしている。
私の顔色を確認するように見つめると、大きく頷いて再び頭を撫でて口を開く。
「今日の柱稽古は久しぶりに縁側で見ててもいいぜ?たまには見てェだろ?」
「え…?!い、いいの?見たい…!」
「おー、いいぞ。まぁ、炭治郎達は次の柱のところに行っちまったからもう来ねぇけどな。」
「全然良い!見たい…!!」
この二週間。
本当に天元以外と話していない私。
この居間にいる六人の同居人達とすら話していなかった。
だから今この場にいるだけでも嬉しいのは勿論だが、柱稽古で聴こえてくる賑やかな声が羨ましくて布団の中で肩を落としていた。
つい数ヶ月前までは私も天元に稽古をつけてもらっていた継子だった。
そんな過去はもう思い出せないほど、体は弱ってしまって全力疾走しただけでこんな有り様だ。
恐らく左目を失って、まだまだ機能訓練段階の左手を持つ天元よりも私の方が遥かに戦線復帰など難しい。
自分の体のことだ。
そこだけは何となく未来が見えてしまう。
私はきっと……もう戦えない。
仮に戦えるくらいの健康体に戻ったとしてもその時にはもう何十年も経ってしまっているだろう。
今度は年齢的に難しい。
「よし、じゃあ飯食ったら羽織りを着て部屋で待ってろ。迎えに行くからよ。」
「うん!」
天元もきっとそれを理解している。
だから私のことをこんなにも大切にしてくれるんだ。