第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
そもそも私はまたもや長く床に伏せていたことで、随分と貧相な体になってしまっていた。
薄暗いところで見られるならばまだしも、愛している彼にこんな見窄らしい体を明るいところで凝視されるなんて恥ずかしくてたまらないと言うもの。
いや、この体で私は記憶が戻る前、一度天元に抱かれているけども…。
あの時は、記憶がなかったのだから無効だと思う。
しかしながら、私には少しだけ不安な事もあったりする。
少し前の天元ならばどこそれかまわずに"勃起した"発言をしていたと言うのに、後ろから抱え込むように風呂に入っていてもその片鱗は見受けられない。
やはりこんな貧相な体など抱く気にならないのだろうか。
もしそうならばどうにも認めたくない事実だ。
そんなことはないはずだ。
あの日、彼はとびっきりの求婚をしてくれて私もそれに同意したのだから。
「はぁ?何言ってるんだか。お前の体なんて隅々まで知り尽くしてんだぞ。今更何を恥ずかしがることがあるんだよ。」
「…そ、そうだけど…」
天元は良い。
柱を引退しても尚、柱稽古もあったりするので未だに現役と変わらない逞ましい体つきをしている。
左目を失ったことで戦線復帰は難しい。
私が治した左手もまだ以前のように日輪刀を振り回せるほどではない。
回復にはこちらも年単位の機能回復訓練が必要になる。
そんな状態でもちゃんと体を維持しているのは彼の努力の賜物。
私の世話をしながらも時間を見つけてはいまだに体を鍛えてるのは知っているのだから。
「…ちょっと…見窄らしい…から。恥ずかしくて…」
「見窄らしい?何が?」
「何がって…!か、体が…!」
「はぁ?…ああ、痩せちまったからってことか?馬鹿なのか?ンなもん、あんな何ヶ月も寝たきりだったんだから当たり前だろ。俺からすりゃ生きてるだけで十分だ。細かいこと気にしてんじゃねぇよ。」
取りつく島もなくそうピシャリと言われてしまうと呆れたようにため息を吐くと久しぶりに夜着以外の着物を出して来てくれた。
「ほら、飯行くんだろ。着替え手伝ってやるから。」
「ひ、一人で…!」
「急に起きたら眩暈起こすだろうが。いいから甘えてろ。」
彼はきっと私よりも私の体をわかっている。そう言うと天元は私の体を優しく抱き起こしてくれた。