第51章 【番外編】そこにあるのは無限の愛※
「お、36度9分。良かったじゃねぇか。平熱に下がったな。」
「ほ、ほんと?よかったぁ…。」
かれこれ二週間になる。
記憶が戻った日に全力疾走したことが仇となり、私は二週間も寝込んだのだ。
こんな状況に何故なったのか?と言うこともちゃんと理解しているし、思ったよりも体が負債を抱えてしまったのは否めない。
自分がしたことでのことなので体がこんな風になっても後悔はない。
でも、天元はこの二週間付きっきりで看病してくれてずっとそばにいてくれた。
それに関して申し訳なさが募ったのは間違いないのに、天元は熱が出たことに関しては想定内だと言わんばかりにどこ吹く風。
少しも面倒だと言う顔もせずにむしろいつもニコニコ笑って隣にいてくれた。
「…やっと布団から出られる…。」
「馬鹿馬鹿…お前なぁ。そんないきなり動くとまた熱出すから。」
「へ…?!え、さ、散歩は…?みんなとごはんは食べれる?え…!お、お風呂一人で入って良い?!」
「おーちーつーけー。とりあえず移動は俺が抱えてやるから。飯は居間連れて行ってやる。散歩は明日熱がなかったら、な?風呂はまた俺とだろ?!文句あんのか?!あ?」
機嫌が悪そうにこちらを向くと鼻息荒めに捲し立てた天元だけど、その内容は嬉しさ半分というところ。
もちろん天元の至れり尽くせりのお世話ぶりはありがたいのだが、一緒にお風呂に入るのだけはどうにも恥ずかしいのだ。
流石に高熱だったときは雛ちゃん達が三人で清拭してくれていたのだが、風呂に入りたくなってしまった私が天元におねだりしたのが事の始まりだ。
微熱ともなれば、体のだるさは格段に高熱の時のそれよりも軽くなる。
歩いたり走ったりだってできちゃうだろう。
しかし、それをすればまた天元の手を煩わせるほどの高熱を引き起こす。
せめて風呂に入りたい…とおねだりしたら風呂の中で倒れたら困るからと言う理由で一緒に入ることになったのだが…
「明るいところで見られるの、恥ずかしい、んだもん…」
こんな女心は天元に伝わらない。