第10章 『実家に帰らせて頂きます』【其の弍】
産屋敷様のお薬は一週間に一度調合している。
要するに私はその度にあの力を多かれ少なかれ使用しているわけで、一度にかかる負担は軽度だが少しずつ体が疲れていっている気はしていた。
宇髄さんに"顔色が悪い"と指摘されたことも多分合っている。
だけど今更やめられなくなってしまっている私はどうしたもんかと考えるが、大した打開策を見つけ出すことができずにいた。
産屋敷様にもっといいお薬を処方できれば力を使わなくて済む…。
そのためにはやはり母が残した薬師としての能力に手がかりはないかと思っていた。
本当はそのためには一人で行って帰ってきた方が何かと都合が良かったのだが、宇髄さんが付いてきてくれるというのを断ることはもうできないし、行き帰りの安全は保証されるということは回り回って産屋敷様のためにもなると言うことなのだ。
「宇髄さん、行って帰ってくるのに一週間くらいかかると思うんですけど、本当に大丈夫ですかね?」
「はぁ?そんなかかるわけねぇだろ。俺が一緒に行くのに。四日くらいだろ。」
「…え、ええ?!そ、そんな早く帰ってこれます?!」
「悪いが俺の俊足は柱随一だぞ。お前を抱えたとしてもそれくらいだ。」
「え?やだ、私、自分で走りますから!」
「お前が走るより俺が抱えて走った方が速いっつーの。」
何だろうか。
物凄く悔しい。
柱との実力の差を思い知らされた気がする。
なんだかんだで強くなってきているとは思っていたけど、師匠には遠く及ばないのだと遠くを見た。
「その方がほの花を他の男に見せずに済むしな!」
「……そこですか?!」
「俺の心配の9割はお前のことだ。当たり前だろ。」
そうドヤ顔でニヤリと笑う宇髄さんにこちらが呆れてしまう。そもそも自分の方がかなりの美丈夫だと分かっているのだろうか。
本来ならば私の心配をしている暇などないはずだ。
しかし、出発当日、当然のように私を抱き上げる彼を私以外誰も止めてくれなかったことに一人で打ち拉がれることとなる。