第50章 【番外編】溺愛はほどほどに
「まぁ、宇髄は昔からほの花馬鹿だからよォ。今に始まったことじゃァねェだろォ?」
「そうだな。ほの花のことで気を揉んでいるのは想定内のことだ。」
お館様と話していれば、そう横槍を入れてきたのは俺と共に生き残った不死川と冨岡だ。
揶揄されていても共に戦った同志。
こんな風に話せるのもまた平和になった証でもある。
「昔、犬を拾ったこともあっただろう?その時も随分とお前に怒られるかもしれないと困っていたぞ。」
「あー……そういや、お前ンとこに行ったんだったな。あの時は考えることがたくさんあり過ぎてそこまで気にならなかったんだよ。だけど、今はそうもいかねぇだろ?」
「まぁ、平和だからな。ほの花がする些細なことが気になって仕方ないのだろう?」
「まぁ、…そんなとこだ。」
冨岡の言葉は大正解だろう。
結局のところ、俺の中でほの花の存在感は日に日に増していると言って良い。
昔は鬼殺隊の柱としてやら、鬼のことやらで頭の中の大半を持っていかれていた。それでも、その脳の残りは全てほの花に注がれていたと言って良いが、今や完全にほの花一色。
今日一日どんな風に過ごしていたのか気になるので、毎日同居人に聞いて回るのもまた日課だ。
「ハハッ、ではそろそろお開きとしようか。天元がほの花不足で枯渇してしまうからね。」
「あ、いや…、俺は…!」
「そうは言っても直に夜になる。お土産を持って帰ってね。また是非一緒に食事をしよう。」
「…ありがとうございます。」
お館様のそんな言葉に焦ってしまったが、外を見れば空が赤らんでいる。
昼間からしていた酒盛りも終わりを迎えてもおかしくない時間帯だというのも分かる。
「お館様、いつもありがとうございます。」
三人で頭を下げると和やかな空気に包まれる。
代償はあまりに大きい。
多くの仲間が死んだ。
耀哉様も亡くなった。
でも、生き残った俺たちが此処で彼らの昔話をすることで後世に伝える。
それが俺たちの鬼殺隊としての最期の責務だ。