第50章 【番外編】溺愛はほどほどに
「…お前も来る…?」
しかし、壁にかけられた時計を見て、若干顔を引き攣らせるとわけのわからないことを言って退けた。
今日は"元柱"の集まりだ。
私は私で炭治郎達と一緒に呼ばれることがあって、要するに階級別?いや、同期だから?
呼ばれる時期が違うのだ。
だから今日、私が行くのは明らかにおかしい。
いくら彼の妻だからと言って、いくら元継子だからと言って、柱と肩を並べるだけの働きはしていない。
「…天元…?駄目なの分かってるよね?」
「くっ…い、っ…てき、ま…す…。」
たかが猫一匹で此処までになるなんて思いもしなかったため、苦笑いをするしかない。
不死川さんと冨岡さんは呆れてしまうだろう。
後ろ髪を引かれるのか何度もこちらを見て行きにくそうにしている彼を見て仕方なく、外までお見送りすることにした。
「ほら、お見送りするよ?旦那様。いってらっしゃいませ。」
「くっそ…ド派手に可愛いこと言いやがって…。帰ってきたら抱き潰す…!!朝まで!」
「……わ、分かったから…。」
「言質取ったからな?!約束したからな?!美味い大根期待しておけよ。」
「ちょ、も、こ、こんなところで破廉恥なこと大きなこと言わないで…!」
履き物を履いて玄関から出てきたばかりの私たちの前には通りすがりの人がこちらを見ている。
"大根"だなんて私たちにしかわからない卑猥な言葉ではあるけども、それを聞いて恥ずかしくてたまらない私は彼の背中に顔を埋めた。
「おいおい、こんなところで甘えてくんなって…勃っちまうだろ?良いのか?俺は昼間であろうと外であろうとヤれっからな。」
「ひっ、は、早く!行ってきてよぉ!ま、待ってるから!ほら、早く!!」
「はいはい。それなら可愛い嫁の厭らしい姿を想像しながら胸を躍らせて帰ってくるからよ。風呂入って待ってろよな?」
こんな集まりの時は大体鱈腹酒を飲んで帰ってくる。
別にそれは構わないのだが、酒に酔っているといつもより性欲がお盛んな天元に私が付いていけるわけもない。
絶対に気がついたら翌日昼近くなのは間違い無いだろう。
子猫を抱えたまま天元に手を振り、大きなため息を吐いたのだった。