第50章 【番外編】溺愛はほどほどに
「きょ、今日は!シ、シよ?ね?だから…ね?!ちょ、そ、そんな物騒なものしまって?!」
いつの間に日輪刀なんて持ち出したんだろうか。
昔は見慣れていたそれも今では部屋の飾りになっていた。
過去に鬼と戦っていたということを忘れないために。
鬼と戦って勇敢にも散っていった同志たちを忘れないように。
私の舞扇は熱い時に仰ぐのに使ってしまっているけど…(鋼鐡塚さんには絶対に言えないが)
だから対になった大きなそれを天元が持っていると少しだけ昔を思い出して胸がときめく。
今も格好いい彼だけど、昔も昔でいつも私を守ってくれて、あの日輪刀を担いだ大きな背中は本当に頼り甲斐のあるものだった。
きっと多くの隊士たちが彼の背中に安心感を覚えていただろう。
しかし、夜の営みを了承する言葉を発すれば、途端に天元は得意げな面持ちで子猫に向かって指差しをした。
「ハハッ、見たか。この猫野郎が。俺はほの花に夜の誘いを受けるほど愛されてる。お前とは違う。分かったか?!」
「………。」
何を言っているのだろうか。
昔の彼は柱として本当に忙しくて、顔を合わせればこれでもかと愛された。
今ももちろん愛されているのだが、それに輪をかけて増えたものはこの嫉妬心と独占欲。
平和だから気になることが増えたのだろう。
わからないわけではないけど、猫にまでそれだと疲れないだろうか?
だけど、どうやらこの子猫も子猫で天元を敵認定しているようで尚も唸り声をあげているのは困りものだ。
「あん…?何だその目は。テメェ、俺の女の薬を使ってやっただけでも感謝しろよ?猫じゃなかったらすぐにでも追い出してやってるからな。」
「て、天元…!ほら…!今日は不死川さんと冨岡さんとお館様のところに行くんでしょう?急がないと遅れちゃうよ?」
そう。今日は元柱組が産屋敷邸に呼ばれている。
定期的に柱は呼ばれて今までの労いをしてくれるようでそれがたまたま今日だった。
不死川さんと冨岡さんともたまに会ったりするようだけど、お館様を交えてのこの会も天元は凄く楽しみにしているようだ。