第50章 【番外編】溺愛はほどほどに
「駄目ってこと…?怪我をしたまま放り投げろってこと…?そんなの…可哀想…」
俺は一体何を言っているのだ。
おかしなことを言っていることは十分理解している。
ただどうにもオス=男だという図式が消えない。
ほの花に対して独占欲が止まらないのは恋仲になった当初から変わることはない。
今だってほの花が他の男と話していたら腹が立つし、この猫が胸元で戯れていたら俺の女に触れたと思って腹が立って仕方がなかった。
でも、見上げてくるほの花の顔がクソ可愛くて自分の発言を責められている気分になる。
もちろん褒められるものではないので、責められてもそれを受け入れるつもりだ。
「…ンなこと、言われてもなぁ…」
「私、怪我が治るまで責任持ってお世話するよ…?治ったらちゃんと外に放つから…それまで駄目…?」
「…駄目だ。」
「どうしても…?ねぇねぇ、天元…どうしても、駄目?」
分かってやってんのか?コイツは。
俺はほの花のおねだりには滅法弱い。
遠慮しがちでちっとも甘えてこなかったほの花が此処最近こんな風にたまーに甘えて来てくれるのが嬉しくてたまらないのだ…
が、そのおねだりもこんなことに使われてしまえば、一度断言した言葉をひっくり返したくなってしまう。
男たるもの二言はない、と言いたいところなのだが、俺のこの決意はほの花によって簡単に覆されるのは最早想定内の事案だ。
「…ぅ…、わ、わぁーった!わぁーったよ!じゃあ、怪我が治るまで、だ。いいな?」
「え?いいの?!うん!ありがとう!天元、大好きーー!!」
そう言って抱きついてくるほの花を片手で受け止める。
しかし、もう片方に持っていた猫が近くに寄って来たほの花に嬉しそうに『にゃあ!』と言って飛びつこうとしてるのは制した。
(…置いてやるのは了承したが、俺の女に安易に近付けると思うなよ?)
俺のこの独占欲は病気だと胡蝶によく言われていたが、そう言われても何とも思わない。
初めて自ら選び、愛した女だ。
誰かに奪われることだけは御免なのだから。