第50章 【番外編】溺愛はほどほどに
「ほの花ちゃん?!どうしたの…?!大丈夫?!ってぇ!?ね、猫?!」
帰ってくるや否や当然のことながら足を引き摺ってきた私を見て、外で掃き掃除をしていたまきをちゃんが近寄って来た。
そりゃあそうだ。
"ちょっと散歩に行ってくるね"と出て行って帰って来たらボロボロな挙句、猫を連れて帰って来たのだ。
彼女が驚くのも無理はない。
「あ、あはは…ね、猫が怪我をしてて…手当てしようと思って連れて帰って来たの。」
「はぁ?!いやいや、猫もだけど…ほの花ちゃんも着物も汚れちゃってるし、足も…!痛いんでしょ?」
「その、えと………はい。て、天元…もう、帰ってる…?」
「……まだだから、早く着替えて手当てもした方がいいね。天元様に見つかったらほの花ちゃん散歩も行かせてもらえなくなっちゃうよ。」
私が気にしている理由を察してくれたまきをちゃんはすぐに肩を支えてくれて屋敷の中に連れて行ってくれる。
二人の共通認識と言えば、天元の''過保護ぶり"だ。
もちろん天元のことを愛しているし、心配してくれるのはめちゃくちゃ嬉しいのだけど、度が過ぎる時があるのだ。
少しくしゃみをしただけでも、毛布をぐるぐる巻きにされて布団から出してくれないし、月のモノが来た時は『痛いだろ?』と言って一日中抱き上げられて家の中を歩く。
先日は風邪を引いた時、治ってもしばらく外出禁止令が出されていた。
皆、こぞって『過保護すぎだ』と言っても天元の心配性は尽きない。
まぁ、その理由は私の体が完全体でないことが一因だから大っぴらに責められないのだ。
彼がそうなるのは私のことを大切に想ってくれているからだから。
「そ、そうだね…!まきをちゃん、あとでお湯沸かしてくれる?猫ちゃんの泥とか拭き取って清潔にしたいから」
「それはいいけど…ほの花ちゃんは?」
「私は自分で手当てできるから大丈夫だよ。これでも薬師ですから!」
そう、そこだけは声を大にして私が自信を持って言えるところ。
いや、今の私にはそれしか自信を持てるところはないのだから最後の砦というやつだ。