第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
暁達がいなくなった玄関に響いているのは私の泣き声。
怖かったのと、申し訳ないのと、情けないのと…いろんな感情が入り乱れてわけがわからない。
それでも後ろから抱きしめてくれるぬくもりだけが私を安心させてくれる。
「…昔…、任務で鬼に襲われた時も…宇髄さん、来てくれたよね…っ、あの時は…その後、喧嘩しちゃった、けど…。」
そんな温もりを感じながら昔話を話し始めれば、急にその腕のぬくもりは離されて目を真ん丸にした宇髄さんが私を見下ろしていた。
「へ…?な、え、お、お前…、覚えてる…のか?」
「ま、まだ…断片、的だけど…。…はい。」
「…オレの…継子、だったの、覚えてるか?」
「……はい。鬼殺隊音柱・宇髄天元さん…。」
そうだ。
私は…彼の継子で、恋人だった。
それはまだ断片的な記憶。
でも、私の脳裏に焼き付いているのは隊服を身につけた宇髄さんの姿。
── ひょっとしたら宇髄さんが前世で好きだった人だったりして…!
あんなこと、その場で思い浮かんだことを適当に言っただけだった。
それなのに蓋を開けてみれば、本当に宇髄さんは前世で添い遂げた唯一の男性。
命すら彼に捧げても惜しくないと思うほど愛した人。
顔を見合わせると再び吸い寄せられるように唇を合わせた私たち。
そのまま甘い雰囲気になっていく……
と思いきや、再び体を離した宇髄さんはニッコリと満面の笑みを向けていた。
しかし、その瞳は全く笑っていなくて、私は若干身震いをした。
「…お前…オレ以外の男とヤりやがって…。」
「へ…?!え、い、いや…!そ、それは宇髄さんもですよね…?!」
「何回ヤった…?あのクソ野郎と…」
「そ、そんなの…数えて…ナイデス…ヨ…」
このやりとりは不毛だと思う。
確かに前世では処女だった私は宇髄さんしか知らなかったのかもしれない。
だが、生まれ変わったこの現代の世界で成人した私が処女を貫く方が至難の業ではないのか?
…と思うのだけど、相変わらず大きな彼に見下ろされるとどうにも蛇に睨まれた気分になり、肩を竦ませた。