第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
此処は甘い雰囲気になっていくところだろうが、先ほど壁に押し付けられて霰もない姿になっていたほの花を見て今になって苛々が募ってきた。
そもそも"今のオレ"はちゃんとした恋人でもないのに怒るのは憚られるが、ほの花が記憶を思い出しかけているのならばもう遠慮はいらないはずだ。
そう思うと、途端に湧き起こるのは前世の時の溢れんばかりのほの花への想い。
うっかり咎めるような言い方をしてしまったが、それほどまでにオレのほの花への想いは強い。
「……仕方ないことだってわかってるけどよ…、めーちゃくちゃ腹立ってる。オレのほの花に手出しやがって…。抱かれた回数の100倍抱いてやる…!!」
「え、や、あ、あの…!ちょ、っと落ち着いてください…!」
しかしながら、せっかく記憶を取り戻しつつあると言うのにほの花にも少しばかり不満がある。
「暁とは年単位でお付き合いしていたので…!その、数は多くて当たり前、というか…」
「気にいらねぇのはそれだけじゃねぇよ。」
「えぇ…?ま、まだなにか…?」
「何で"宇髄さん"で、敬語なんだよ。」
確かに継子時代のほの花はそう呼んでいたこともある。
だけど、最終的に夫婦となった時は名前で呼んでくれていたし、もちろん敬語なんて使っていなかった。
「えぇ!?きゅ、急に…?ですか?」
「急じゃねぇ!!100年前もそうだったろうが!!」
「そう、ですけど…、え、と…いや、そう、だね。ごめん、ね。…て、天元…。」
しどろもどろになりながら、敬語を外し名前で呼んでくれたほの花に甦ってくるのは昔の記憶たち。
映像になって脳に流れ込んでくるそれはまるで一つの映画を見ているかのよう。
「…オレ、離す気ねぇからな。」
「う、うん。」
「お前は…誰の?」
「天元、の、です。」
真っ赤な顔をして恥ずかしそうに下を向くほの花に漸く満たされていくような気分だ。
彼女の手を引くと再び、引き寄せると甘い唇に己のを押し付けた。