第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
「…お前、何してんの?」
「っ…!?!?」
オレは気付かれないように足音をさせずに近付くと伊織に向かって声をかける。
突然声をかけられたことでビクッと肩を震わせるとこちらを見て眉を顰めた。
「…何、天元。」
「こっちのセリフだわ。此処で何してんだよ。」
その手にはペットボトルの水が飲む素振りもなく蓋が開けられていて、どうにも嫌な予感がした。
「何してるって…?あんたの可愛い可愛いほの花ちゃんの顔を拝みに来ただけよ。それくらい良いでしょ?」
「ほの花は今日いねぇよ。風邪ひいて寝込んでんだよ。」
「っ、……あ、そ…じゃ、帰るわ。」
無造作に捨てられていたキャップを拾い上げるとペットボトルの蓋を閉めて、立ち上がった伊織の肩を掴む。
「なぁ…聞くけど、お前そのペットボトルどうするつもりだったんだよ。キャップ捨ててよ。」
「別に…?あんたに関係ないでしょ?」
「関係あるわ。夏なのに風邪ひいた理由は何だろうな?って考えてたんだよ。」
「…さぁ?お腹だして寝てたんじゃないの?」
まぁ、一筋縄ではいかないだろう。
尚もしらを切るつもりなのか伊織は顔を背けた。
「じゃあ、もう一個聞くわ。お前、此処に来たの初めてじゃねぇだろ?」
「…だったら何?」
「会えたのか?ほの花に。」
「………」
「これはあくまでオレの予想だけどよ、お前此処に何度も何度も来てほの花にその水ぶっかけてたんだろ?それでアイツに風邪ひかせた。違うか?」
「っ……!風邪ひいたのは!あの女の勝手でしょ?!私のせいじゃないわ!!」
ビンゴってわけね。
手に持っているのはどうやらよく冷えたペットボトル。外側に水滴が付いているのがその証拠。
そんなものをぶっかけられれば体が冷えるに決まっている。
しかも、仕事後にやられればなす術は無い。
況してやアイツは伊織に引け目を感じているのだから身を持って償おうと思ってもおかしくない。
「…これ以上、ほの花に手は出すな。頼む。」
女でなければ殴っていた。
だが、オレとて伊織に後ろめたさはある。
先に手を出してしまったオレの責任もあるからだ。