第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
── 今日、だけでいいから…、ここにいて、ください…。
悲痛な言葉を言うとオレの胸に顔を埋めてしくしくと泣き始めてしまったほの花の真意はわからない。
たかだかペットボトルを渡したくらいで怯えたような表情をしたほの花を不可解だと思うのは当たり前だ。
オレはほの花のことならば手に取るようにわかると言うのに。
そんな風に怯えられたらほの花に何か起こっていたのだと言うことが分かってしまう。
何があったのかと言うことは明確にしないが、泣いている彼女からは悲痛な心中がダダ漏れで少なくともオレが関わっていることだと言うことも何となく理解した。
だが、オレはここ最近はほの花に会っていなかった。ぐだぐだしていたがために、完全に出遅れてしまった次第だ。
消去法でオレではないとなると……
「ひょっとして…伊織が…来たか?」
「…っ、…」
腕の中でほの花の肩が再びビクッと震えた。
ああ、そう言うことか。
それでこんなにも怯えているのか。
何をされたのかは知らないし、完全に自分が来るのが遅かったのは否めない。
全集中音の呼吸を使いたいのは過去の自分に対して、だ。
何故もっと早く来なかった。
煉獄の言う通り早く来ていればコイツが傷つくことはなかったはずだ。
傷心のほの花につけ込んで抱いたのは自分だ。責められるのはオレであって、ほの花ではない。
「…お前、彼氏には、言ったのか?」
尚も顔を埋めたままフルフルと首を振るほの花を見て、オレは考えを巡らせる。
ここまで来てしまうとほの花にも心を決めてもらわなければ、それこそどっちつかずになってどちらの怒りも買うことになるだろう。
ヤっちまったオレが言うべきではないが、意を決して口を開こうとすると、先にほの花が話し出した。
「…で、も…、浮気のこと…ちゃんと聞いてみます。宙ぶらりんの状態だと…私も前に進めませんので…」
前に進むと言う言葉の真意は分からない。
でも、ほの花の言葉を聞いて嬉しくて口元が緩むのを止めることはできなかった。