第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
「…っ、だ、大丈夫、です…。」
「オレ、何かしたか?何でそんな怯えた目するんだよ。」
「お、びえてな…!宇髄さん、は…何もしてない…!!」
「オレ"は"?どうした…?何かあったのか?」
優しく穏やかな口振りが私の涙腺を刺激していく。泣いてもどうしようもないのに。
何でこの人に会うとこんなに心が乱されるのだろう?
何でこんなにも苦しいんだろう?
何でこんなにも甘えたくなってしまうんだろう?
ツーっと頬に伝った涙を見て宇髄さんは何も言わずに抱きしめてくれる。
大きくて広い胸。
逞しい腕。
鎧のような筋肉。
私、本当にこの人とつい最近初めて会ったの?
何故だか分からないの。
分からないけど、あなたのことをずっと前から知ってる気がする。
そして、それが狂おしいほどに私の心を掻き回していくの。
「…っ、なん、で…?」
「…ほの花…?」
「宇髄、さんのことを考える、とっ…、苦しいよ…。入ってこない、でよ…!これ以上、入って、来られると…、欲しくなっちゃう…から!」
そうだ。
私は宇髄さんが欲しくなってしまっていたんだ。
本当は伊織さんの行為を止めなかったのは彼とセックスをしたことの贖罪ではない。
欲しくなってしまったから。
宇髄さんのことを好きになってしまったから。
だから彼女の気が済むまで私に傷ついた分、報復すればいいと思っていたのだ。
伊織さんにはそれをする権利がある。
私はそれほどのことをした。
でも、もう後戻りできないところまで来てしまっていると実感してしまった。
今日、薬局に彼が現れた時、ホッとした。
来てくれて嬉しかった。
きっと定時までいたらまた伊織さんがいたのだろうから。
その前に宇髄さんが来てくれてあそこから連れ出してくれて嬉しくてたまらなかった。
きっと宇髄さんは知らない。
伊織さんがしていたことを。
わざわざ言う必要はないけど、優しくされると責めたくなってしまう。
甘えたくなってしまう。
「…でも…、今日、だけでいいから…、ここにいて、ください…。」
言ってることが支離滅裂だ。
でも、熱に浮かされた頭では上手く考えもまとめられない。
抱きしめられた体が喜んでいる。
彼に抱きしめられたかったと言っているように。
だから今だけ、彼の温もりを下さい。