第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
白衣を脱いで、私服に着替えると後ろ髪を引かれる想いで肩を落とす。
仕事が好き…と言うより薬局が落ち着く。
薬に囲まれているのが落ち着く私は退勤があまり好きではない。
宇髄さんに、会えるなら…退勤が嬉しく感じただろうか。
そんなどうしようもないことを考えながら所長に「お先に失礼します」と挨拶をすると、同僚たちが手を振って見送ってくれた。
しかし、薬局を出てから数秒後に私の体は水浸しになった。
ああ、急にゲリラ豪雨でも降ってきたのか、と空を見上げれば晴れ渡る青空。
薬局の屋根が壊れて雨水が落ちてきた形跡もない。
何故こんなことになったのか呆然としてしまうと後ろから聴き覚えのある声が聴こえてきた。
「…この、泥棒猫。」
「え…?」
振り返った先にいたのは見たことのある女性。
可愛らしい容姿には似つかわしくない怒りを宿らせた瞳が私を射抜いていて唇が震えた。
「…あ、え、と…、宇髄、さんの…?」
「あんたのせいで振られたんですけど?どう責任取ってくれるわけ?」
そこで私は初めて宇髄さんが彼女を振ったのだという事実を知らされた。
確かに宇髄さんは私にそう言っていた。
だけど、ちゃんとメッセージを送ったのに。
彼女を大切にして、と。
私だってもう宇髄さんとどうこうなる気なんてないのに、何故別れたの?
勝手にそんなことされても困る…
筈なのに私の気持ちは裏腹。
私のためにちゃんと別れようとしてくれた事実がどうしようもなく嬉しくて泣きそうだった。
Tシャツが肌に纏わりつき冷たい。
彼女が持っていたのはペットボトルの水。
この冷たさから買ったばかりのよく冷えたものだろう。
夏だと言うのにぶるっと震える私の体は鳥肌が立っていた。
「…あの、宇髄、さんは別れる、と?」
「そうよ。あんたにしか興味ないんですって。どう責任とってくれるのよ。慰謝料請求してもいいのよ。」
「そう、言われましても…私には彼氏がいる、ので…。」
「浮気されたんでしょ?良い気味よ。どうせ顔だけでつまんない女だから浮気されんのよ。」
その顔は勝ち誇ったような表情。
浮気されたのは事実だ。
でも、宇髄さんとセックスをしたのも事実だ。
どうしようもできないその事実に押しつぶされそうだった。