第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
宇髄さんと連絡を断ち、暁が家に来た翌日、どんなに心が揺れ動き落ち着かないとしても仕事はしなければいけない。
いつもと同じように出勤し、
いつもと同じように仕事をする。
薬剤師になったのはうちが代々薬剤師だったから。何の迷いもなく薬剤師になったけど、薬を見ていると落ち着くのは何故なのかずっと不思議だった。
薬剤師になるの人は大体患者さんの役に立ちたいとかご立派な志がある。
もちろん私にもそんな思想がないわけではない。
だけど、それよりも薬のことを考えていると落ち着くなんて危ない思考があったのは否めない。
薬を使ってどうこうしたいという犯罪的な思想ではないが、ふわっとした感覚なのだ。
とにかく落ち着く。
だから薬剤師になれた時はホッとしたのを覚えている。これで薬に囲まれて過ごせると。これで見つけてもらえると。
ふと浮かんだ考えに私は随分と狼狽えた。
誰に見つけてもらえるのか?
誰に見つけて欲しいのか?
分からないけどただホッとしたのだ。
そして、最近出会ったのが宇髄さんだった。
出会ったその日に『彼氏いる?』なんて聞かれたのは記憶に新しいけど、セックスまでしてしまった今、思い出したのはどうしようもない昔の話。
だけど、あの時感じたことは宇髄さんのことだったのではないか?なんて考えてしまうのはきっと私が理由を探しているからだ。
宇髄さんに惹かれてしまった理由を。
大丈夫、もう蓋をするから。
もう関わらない。
「神楽さん、今日患者さん少ないから早上がりしていいよ。たまには彼氏とデートでもしてきなさいよ。」
「え…?そ、そんな…悪いですよ!」
「何言ってるの?たまに暇な時はみんなで交代で早上がりしてるじゃない。今日は順番的に神楽さんよ?ほら、着替えて帰った帰った〜!」
「…あ、わ、わかり、ました…。ありがとうございます。」
チラッとガラス張りの窓から外を覗くが、其処は人っ子一人いない。今の時間帯的にまだ学校は終わっていない。
宇髄さんが、来るわけない。
忘れると言った癖に、彼がこの場に来てくれることを望むなんて…浅ましい女だ。