第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
翌日、オレはすぐに行動に移した。
早ければ早いほどほの花に対して誠意を示せると思ったからだ。
オレの中で今更伊織と付き合うことはできない。
気持ちがないのに付き合うことの方が相手に失礼だ。
それ故、伊織の最寄駅に彼女を呼び出した。
この関係を終わらせるために。
改札口付近で伊織を待つと人の流れをぼーっと見つめている。
不思議な高揚感を感じていた。
別れを切り出す前だと言うのにこの気持ちはおかしいのはわかっている。
でも、第六感のようなものがなるべくしてなったとオレに言っているような気もしていた。
聴き馴染みのある声が後ろから聴こえて来たのはその数分後のことだった。
「天元〜!お待たせ。」
「おー。悪ぃな。呼び出して。」
「ううん。初めてじゃない?天元からお誘いがあるのなんて。だから嬉しい!」
「…そう、だったか…?」
それは伊織に言われるまで気づきもしなかったことだった。
オレは伊織とうまく行っていたと思う。
ほの花と出会わなければ普通に結婚していたかもしれない。
だから普通に付き合って普通に愛し合っていたと思っていた。
だが、誘ったことは、ない?
ほの花に対してこれほどグイグイ行っているのだからそれを聞かされてしまうと自分の本気度がいかに違うか露呈してしまってため息が出る。
「そうだよぉ〜!いつも私ばっかり!まぁ、別に良いけどね。で?どこ行く?!この辺だと前に行ったイタリアンが近いよね?」
「…いや、初めて誘っておきながらこんなこと言うのは申し訳ねぇけどよ…。」
ただのデートだと思って来ていた伊織がオレの乗り気でない表情を見て、その顔から笑顔が消えた。
「…え?なになに?なんか深刻なこと?なんかあった?」
「…ああ。伊織に…言わなければいけないことがある。」
「な、何?やだ、何なの?」
「…ごめんな。お前とは、もう終わりにしたい。」
その瞬間、目を見開いて固まった伊織。
叱責されることも詰られることも想定内だ。
殴られても構わない。
それくらいのことはした。
オレが伊織を裏切ってほの花を抱いてしまった。
だから甘んじて伊織の怒りを受けようと思っている。
それがオレにできる最後のことだから。