第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
苛々が止まらない。
今この場にその男がいたら間違いなくオレはぶん殴っていた。
銃刀法違反にならなければ刀で頸を斬り落としてしたことだろう。
それほどまでに腹が立って憎たらしくて仕方なかった。
その男が。
ほの花の彼氏が…。
涙を溜めて、泣きそうな顔で苦笑いするほの花。
そんな顔をさせたくなった。
泣かせたくなかった。
此処にいたらほの花は笑ってくれない。
当たり前だ。
彼氏の浮気現場を見つけてしまったからのだから。
そして、何より自分のためが大きかった。
ほの花が泣いたらきっと抱きしめてそのままオレもそこらにあるホテルに連れ込んでしまっていたかもしれない。
そんなことだけは何とか避けたかった。
ただでさえほの花のことを考えると無駄に性欲を掻き立てられると言うのに。
「…う、宇髄さん、…は、速いです〜!」
「…ん、あ、…わ、悪ぃ。」
駅まで数分はかかると言うのにほの花との歩幅も考えずに無遠慮に突き進んだ結果、彼女を引き摺るように歩いていたことに気付いた。
ほの花が声をかけてくれなかったら電車に乗るまで気づかなかったかもしれない。
「いえ、大丈夫です…、あの…ありがとう、ございます。」
「…へ?」
つい今まで、引き摺ってきた男に言うような言葉ではない。
咎められることを想像していたのにほの花の顔は先ほどよりも柔らかく穏やかだ。
礼を言われた理由はわからないが、再び隣に並んだほの花に向き合うと彼女を見つめた。
「…宇髄さん、怒って、くれてたんですよね?私のために…。だから、ありがとうございます。嬉しかったです。」
「……ほの花。」
「悲しいし、今もつらい、けど…宇髄さんが隣にいてくれて良かったです。一人だったらあの場で泣き崩れてました。」
そう言って笑うほの花はまだつらそうな顔をしているが、消えてしまいそうなほど儚くて綺麗だった。
「…当たり前だろ?無理して笑うな。でも…此処で泣きたくないなら家まで我慢しろ。」
「…宇髄さん?」
一人で泣かせたくない。
きっとほの花は苦しさやつらさを我慢して一人で泣くタイプだ。
何も知らないはずなのにはっきりとそう感じた。