第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
「…ありがと、ございました…。」
横目で彼が通り過ぎるのを見つめていたが、その姿は後ろから見ても横から見ても…もちろん前から見ても暁だった。
腰に回された手は何?
今日、出張だって言ってたよね?
何より彼が消えていった場所に愕然としてしまった。
目の前には心配そうかな私を見下ろす宇髄さんがいて、こんなこと言っても仕方ないことなのにうっかり彼に甘えたくなってしまった。
優しい温もりと懐かしいような甘い匂いが私を簡単に沼に陥れていくようだった。
「どうした…?急に…。何かあったのか?」
「え、と…、その…」
「言ってみろって。流石に抱き締めちまった後に言うのはアレだけどよ。理由が欲しい。」
彼の意見は尤もで、私たちは付き合っていないのだから先ほどの行動には理由がなければ許されないのだ。
私は詰まる喉で紡ぎ出す言葉は震えてしまう。
それでも言わなければ彼には知る権利がある。
「…か、彼氏が…さっき、そこ…通って…。」
「は?!そりゃ、悪かったな。大丈夫か…?見られてねぇか?何ならオレ、ちゃんと彼氏に説明してやるけど?何でもないって…」
心配してくれているのは分かっているが、問題はそこではない。
曖昧な顔で笑うとことしかできない私は話を続ける。
「…出張、の筈なのに…女の人、連れてたから…。」
「…は?」
「こ、腰に手なんて回して…、仲睦まじげで…すぐそこのホテル、入っていった、から…」
眉間に皺を寄せる彼が振り向いた先にあるのは所謂ラブホ。
そこで男女が何をするかなんて一目瞭然だ。
目に溜まった涙は浮気されたことが悲しいから?
それとも浮気されたことを宇髄さんに知られたのが恥ずかしかったから?
何も言わずに暫くそこを見つめていた彼が、再度こちらを見ると私の手を掴んで駅へと向かっていく。
「さ、行こうぜ?送るから。」
「宇髄…さん?」
「…何も言うな。今、そのことを考えるとそいつをぶん殴っちまう。ここから離れよう。」
その顔は怒りに満ちていて、怒ってくれていることに不謹慎だが嬉しいと感じてしまった私は彼の手に導かれるがまま歩いていく。
彼と共に行く先がどうしようもないほど暖かくて、幸せな光に満ちている気がして。