第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
急に目の前にいたほの花の顔が青白くなったのが分かる。
先ほどまであれだけ可愛い笑顔を向けていてくれたと言うのに、一体どうしたのだろうか。
「…ほの花?どうした?」
「っ、宇髄さん、私を、隠して下さい。」
「へ?」
「お願い、お願いします…!」
急に懇願するように縋りついてきたほの花を見てどうしたもんかと思ったが、『隠してくれ』と言うその顔は切羽詰まっていて冗談ではなさそうだ。
悲しそうなような
寂しそうなような
少し泣きそうなその顔に無意識にオレはほの花の手を引いて胸の中に閉じ込めた。
頼まれたのは姿を隠してくれと言うこと。
誰か見られたくない相手でもいたのだろうか。
聞かずともその相手に見えないようにすればいいだけのことなのに、小さく震える肩を見ていても立ってもいられなかった。
抱きしめたその体は思った通り小さくて細い。
守ってやらなければ…と思わせられる彼女を夢中で掻き抱けば、ただのカップルに見えるだろうか?
今だけはそう見られたい。
今だけで良い…?
いや、本当ならば恋人同士になれたら…なんて考えてしまうのは小狡い考えだが、勝手に脳裏に浮かぶことは取り消せない。
「…ほの花、悪ぃな。隠し方がよくわかんねぇからよ。このまま恋人のフリしてくれよ。それなら良いだろ?」
「…っ、…。」
声を発せずに、首だけコクンと頷いてくれたほの花にホッとした。
どうやら嫌がられてはいないと言うことに。
嫌ならばこの手を振り解けばいい。
そこまで強く抱きしめているわけではない。
あくまで身を隠せるように抱きしめただけ。
それなのにふわっと香ってくるフローラルな匂いが妙に落ち着く…
かと思いきや、体に感じるほの花の肢体の柔らかさに欲情しそうな自分の下半身を叱咤激励した。
(…無になれ。無になるんだ…。)
ほの花のためだ。
ここで欲情していたら送り狼になってしまう。
半ば自分自身との闘いになってしまったが、数分後目を赤くしたほの花がオレの胸から離れると、残念なような…ホッとしたような…複雑な心境だった。