第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
我慢なんてできやしねぇだろ?
頭で考えるより先に動いてしまうほど衝動的だったんだから。
ほの花の手を引いてやってきた映画館。
本当にドタキャンされたのだろう。ほの花の手元には2枚の前売り券があって、無遠慮について来てしまった。
"オレのことは興味ない"とはっきりと言っていたけど、それでも良かった。
"今は"それでも。
ゆくゆくはどうしたいのか?と聞かれたら良からぬことが思い浮かんでしまうので、考えないようにした。
「彼氏、そんなに忙しいのか?」
「そうなんですよ。営業をしてて…。今日から出張みたいで、宇髄さんと会った土曜日に一緒に映画に行く予定だったんですけど休日出勤だったようなんです。」
「へぇ…。」
仕事のことは分からない。
教師しかしたことないし、学生時代のバイトと仕事じゃわけが違う。
彼氏が忙しくてほの花と会えないっつーなら随分不憫だなとは思った。
だが、代わりに自分が映画に行くことへの罪悪感はなかった。
本当におかしなことだが、ほの花の隣にいる自分に少しの違和感もなかったからだ。
隣でこうやって並んで歩いていても、話していてもそこに違和感はない。
むしろしっくりくる。
「…土曜日に1人で行かなかったのか?」
「あー…迷ったんですけど…、人も多いし…、宇髄さんカップルがラブラブで見せつけられたので行く気が失せました。」
フフッと茶化すようにこちらを見上げるほの花に自分達の関係性が恋人ではないとハッキリ言われた気分だ。
「おー、そりゃ悪かったな。今日はオレが彼氏のフリしてやるよ。ド派手に良い男が彼氏役なんだから感謝しろよ?」
「あ、間に合ってます。」
「あんだと?!?!」
「あははっ!!嘘です嘘です。でも、いい加減手は離してくださいよ。体裁悪いので。」
「……あ?」
そう言われて漸く繋いだ手に着目した。
(……忘れてた。)
共に映画に行きたいと言うことに注目し過ぎてうっかり忘れていたが、細くて小さな手を何の迷いもなく繋いだままだった。
──体裁悪いので
これがほの花の本音なのは間違いないが、どうもその本音もまた懐かしいようなそんな気分にさせられた。