第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
「へぇ…、そうか。彼氏忙しいのな。」
「…そう、なんです。だからこの映画も一緒に行く約束してたんですけど…行けなくなっちゃって…。」
「ふーん。」
寂しそうに下を向いて笑うほの花にどうしようもなく抱きしめたくなってしまう。
だが、ほの花に向けて伸ばした手を何とか収めると頭をポンと撫でた。
気持ちを収めるのにこうも労力が必要だったか?と思うほど。
「…じゃあよ。彼氏の代わりにはならねぇだろうけど、一緒に行くか?映画。」
「…え?!あ、いや、だ、だ、大丈夫です!すみません…私ったらそんな風に聴こえたなら謝ります…!」
「何の映画見んの?」
「え、…あ、って…宇髄さん?聞いてます?!」
「なぁ〜、何見んの〜?」
デカい図体の男が華奢な女に何を言っているんだか。
だが、何故だか分からないが、ほの花は受け入れてくれる気がしていた。
どんなオレでも受け入れてくれる。そんな気がしたんだ。
彼女の服の裾を持って『なぁなぁ〜』と言い続けていると、諦めたように鞄から前売り券を取り出したほの花。
「おっ!これオレも見たかったんだよなぁ。じゃ、行こうぜ〜!チケット代分、帰りにメシ奢るからよ。」
「え…?!ほ、本気、ですか?!彼女さんに、怒られちゃいますよ?!」
「友達と映画行くだけだろ?ほら、行くぜ。ほの花。」
──友達と映画に行くだけ
そうだ。ほの花は恋人でもなければ嫁でもない。
オレたちはただの友達。
その関係性にモヤモヤとしてしまうけど、今は彼女と一緒にいられることが嬉しい。
彼氏の代わりでもいい。
その穴埋めでもいい。
ほの花の隣に居られるならそれで良かった。
オレはほの花の手を取るとズンズンと前に進んでいく。
無意識にとった手だけど、本来男女の友達同士で手を繋ぐことなどあり得ないだろう。
事実オレは女の友達は少ない。
漏れなくそう言う関係になってしまうからだ。
だが、それで事足りていた。
それなのに今、オレは頭の中で必死に女友達の定義を模索している。
何のために?
そんなの決まってる。
ほの花との関係性を保つために他ならない。