第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
土曜日の朝
『悪い、ほの花!映画行けなくなった!仕事入っちゃってさ。ごめんな?』
そうやって入ってきたのメッセージを見て、ハァ…とため息を吐いた。
久しぶりのデート。
いつもより念入りに化粧をしていたというのにそのメッセージで風船が萎んでいくようにやる気が削がれていった。
彼が見てくれないのなら意味がない。
綺麗に施した化粧も
今日のために買ってあった新しいワンピースも。
ドタキャンされたのは初めてではない。
付き合ったばかりの頃はそんなことなかったけど、今年に入って仕事が忙しくなってきたようで急にこういうことが増えた。
しかし、手には今日のために買ってあった映画の前売り券。
別に今日でなくても構わないのだが、映画をキャンセルされたのも初めてではなくて、以前もこういうことがあってその時は結局上映が終わってもしまって見ることは叶わなかった。
今回はそうならないように1人でも観に行こうと決めていたのだ。
オシャレする意味もなくなったので、洗いざらしで置いてあったTシャツとデニムを引っ張り出して着ると、小さな斜めがけのバッグを引っ掴んで家を出た。
初めての彼氏だ。
やはり私がこんなことで一喜一憂してしまうのは良くないことなのだろう。
燦々と注ぐ太陽の光が私を照らしてくれる。
気を取り直して映画を見にいくために街に繰り出したところで声をかけられた。
「ほの花!!」
その声は聴いたことのあるもので、何度も何度も呼ばれたことのあるような気がした。
そんなはずはないし、そんな事実もないのに。
何故かやけに脳に響くそれは胸が苦しくなるようなそんな感覚を覚える。
反射的に後ろを振り向けばそこにいたのは見たことのある銀髪に大きな体に綺麗な顔をした宇髄さんだった。
私を呼び止めてくれたのが宇髄さんで泣きそうになるほど嬉しかったというのに、後ろからひょこっと顔を出した女の子に血の気が引いていくような気分だ。
──オレも彼女いるし…
ああ、そうだ。
そう言っていたではないか。
当たり前だし、そんなこと仕方ないことなのだ。
それなのに…
何でこんなに
苦しいんだろう。