第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
「意味はねぇ、けど。ただ呼びやすかったんだよ。」
「何か仲良さげで嫌なんだもん。変えてよ!」
「あー、わぁーったわぁーった!神楽サンね。これでいいだろ?」
「何かやっつけ〜!!まぁ、いいけどさぁ…。浮気したら許さないからね?!」
浮気、ねぇ。
伊織がそう心配するのも無理はない。
オレは来るもの拒まず去るもの追わずな性格だ。
前の彼女と別れた翌日にこいつから告白されてものの数秒でOKしたのだから随分と軽い男だと思われているのは無理もない。
だが、そんなオレをよそ見させないようにと毎日毎日連絡を寄越して、休みの度に泊まりにくる伊織に浮気する時間はなかったし、ぼんやりとこのまま伊織と結婚するんだろうなと思っていた。
激しい感情の抑揚はないが、一緒にいて別に邪魔だとも感じたことない伊織。
要するに空気みたいな存在だ。
良い奴だし、好きだが…
正直、ほの花と出会ってから少しだけ分からなくなっている。
四六時中頭の中にいるのは、ほの花だった。
そして眠れば、よく分からない女が夢に出てくる。
オレの1日の中に伊織を考える時間は物凄く減ったと言わざるを得ない。
「…浮気なんて、しねぇよ。」
「当たり前でしょ?そろそろ結婚しなさいよって親にも言われてるんだからね。」
「…あー、ケッコンねぇ。そうだな。」
分かってる。
結婚をせがまれてるわけではないが、こうやってチクチクと言ってくるのも仕方ないと思う。
付き合って一年半。
お互い餓鬼じゃないんだから、結婚の話が出るのも無理はないのだ。
それなのに頭にチラつくのはほの花のことばかり。
「その話はまた今度しようぜ?腹減ったからメシ食いにいかねぇ?」
「もう〜!色気より食い気なんだから!!ちゃんと考えておいてよ?!指輪だってちゃんと買ってよ?!」
「へーへーわかりました。」
「ちょっと〜?!玩具の指輪じゃないんだからね?分かってる?!」
玩具の指輪…?
玩具の、指輪…?
何だ?
いつだったか玩具の指輪をあげたら花のように笑い、喜んでいた女がいた気がする。
何処で会った?
いつだ?
それなのに女を思い浮かべれば必ず出てくるのはほの花。
最早オレの頭の中に女はほの花しかいないのか?と思ってしまうほどに。