第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
「今日はデートですか?」
「あー…「そう!です!!!」…です。」
伊織があからさまにほの花に敵意を剥き出しにしている。
それはほの花にも伝わっているようで苦笑いをしてオレをチラッと見た。
「え、と…彼女さん、すごく可愛らしい方ですね。私も今日、彼とデートの予定だったんですけど…仕事になってしまって…。」
そう言うほの花の顔は寂しそうに揺れていて思わず抱きしめたくなってしまったが、それを止めたのは伊織の声だった。
「え?彼氏いるんですか?!」
「ふふ…、はい。いますよ。」
「なーんだ!!もう!天元ったら早く言ってよ!!」
「取り付く島がなかったくせによく言うぜ…」
それにしても仕事が忙しい彼氏という情報だけは手に入れたからそれはそれでラッキーだと思うことにしよう。
「では、デートの邪魔しては申し訳ないので、私はこれで…。宇髄さん、眠れないようならまたお薬もらいにきてくださいね。」
「あ、ああ。ありがとな。」
深々と頭を下げてその場を去っていくほの花はいつもと違って髪を下ろしているからかサラッと肩から髪が落ちる度にふわりと花の匂いがした。
控えめで、優しい、そんな匂いが香ってくると再びドクンと胸が跳ねた。
思わず去っていく肩を掴んでこの腕の中に閉じ込めたい衝動を隣にいる伊織が制してくれる。
もし、ここに伊織がいなかったらオレは恐らくほの花の手を掴んで、ホテルに連れ込んでいたかもしれない。
それほどの衝動が今頭の中を轟いている。
だんだんと小さくなって人混みに紛れていくほの花を見送ると、おもむろに伊織が話し出した。
「……めっっっっちゃ、美人…。一瞬、浮気相手かと思った。」
「…ンなわけねぇだろ。」
「でも!でもでも!あんな美人を名前で呼んだりして、親しげだったじゃん!!何だかそれ嫌だ!やめてよ。」
「はぁ?ンなこと言っても仕方ねぇだろ?呼び始めちまったもんは変えられねぇよ。」
だが、言われて見ればそうだ。
何でオレはほの花のことをほの花と呼び捨てにしているのだろうか。
ただしっくりきたと言う他ないのだが、それを伊織にどう説明したら良いのか分からず空を見上げた。